台風時に注意したい火災とは?停電・浸水・強風による出火を防ぐための対策
近年は、記録的な高温や短時間の大雨など、極端な気象現象が相次いでいます。
気象庁の観測によると、全国のアメダスによる1時間降水量50ミリ以上の大雨について、1,300地点当たりに換算した平均年間発生回数は、最近10年間(2016~2025年)では、統計開始当初の10年間(1976~1985年)と比べて約1.5倍に増えています。
また、気象庁の速報値によると、2026年は8月31日までに23個の台風が発生しました。1~8月の発生数の平年値は合計13.6個であり、2026年の同期間の発生数は、その約1.7倍です。
なお、この数字は台風の発生数であり、日本への接近数や上陸数ではありません。また、2026年の値は速報値のため、後日変更される場合があります。
参考:気象庁「台風の発生数」
https://www.data.jma.go.jp/typhoon/statistics/generation/generation.html
参考:気象庁「台風の平年値」
https://www.data.jma.go.jp/typhoon/statistics/average/average.html
台風が近づくと、多くの人は大雨や河川の氾濫、土砂災害、強風による飛来物などに注意を向けます。しかし、台風の際には火災にも警戒が必要です。
雨が降っているから火災は起こりにくいと思われがちですが、浸水や雨漏りで損傷した電気機器、停電後の電力復旧、非常用機器の誤った使用などが出火の原因になることがあります。
さらに、強風の中で火災が発生すると、火の粉が風下へ飛ばされ、離れた場所まで燃え広がるおそれがあります。台風時の火災は、風雨が最も強い時間帯だけでなく、停電中や台風が通過した後にも発生する可能性があります。台風前、停電・浸水時、電力復旧時の各段階で、何に注意すべきかを整理しておくことが重要です。
停電復旧後に起こる「通電火災」
台風時に特に注意したいのが、停電から電気が復旧した際に発生する「通電火災」です。通電火災とは、停電していた建物に再び電気が流れたとき、損傷した配線や電気機器などから出火する火災をいいます。
大雨で床上浸水や雨漏りが発生すると、コンセント、延長コード、家電製品などの内部に水分や泥が入り込むことがあります。外見上は乾いているように見えても、内部に水分や汚れが残っていれば、再通電した際にショートや異常発熱を起こす可能性があります。
また、停電前に使用していた電気ストーブ、アイロン、電気こんろなどのスイッチが入ったままだと、電力の復旧と同時に運転を再開する場合があります。周囲にカーテン、衣類、紙類などの燃えやすい物が接触していれば、火災につながりかねません。
機種によっては、停電によって切り忘れ防止機能がリセットされ、電力の復旧後に再び通電する場合もあります。
消防庁は、風水害でも、浸水や雨漏りによって損傷した電気機器などから通電火災が発生するおそれがあるとして、注意を呼びかけています。停電したら、身の安全を確保したうえで、使用中だった電気機器のスイッチを切り、可能であれば電源プラグを抜きます。
避難のため建物を離れる場合は、安全に操作できる状況であればブレーカーを切ります。ただし、分電盤の周囲が浸水しているときや、手足や床がぬれているときは、感電のおそれがあるため操作しないでください。ブレーカーを切ることよりも、安全な場所への避難を優先します。
水にぬれた電気機器は、乾かしただけで使用しない
一度浸水した家電製品や電気設備は、表面の水分を拭き取っただけで再使用しないことが大切です。内部部品の腐食、絶縁性能の低下、泥や塩分の付着などは、見た目だけでは判断できません。
分電盤、業務用機器、エレベーター設備、受変電設備などが浸水した場合は、電気工事業者、メーカー、設備保守会社などへ点検を依頼し、安全が確認されるまで使用を再開しないでください。
ポータブル電源、モバイルバッテリー、定置用蓄電池なども、水にぬれたり、飛来物の衝突によって変形したりした場合は、使用や充電を中止します。取扱説明書やメーカーの案内に従い、必要に応じて点検や処分について相談してください。
リチウムイオン電池を内蔵した製品は、内部に水が入ったり強い衝撃を受けたりすると、ショートや異常発熱、発火につながる可能性があります。水没した製品を「乾いたから大丈夫」と自己判断し、再び使用したり充電したりすることは避けてください。
停電中の発電機、ろうそく、カセットこんろによる事故
停電中は、照明や調理、充電のために、普段とは異なる器具を使う機会が増えます。こうした器具の誤った使用も、火災や重大事故の原因になります。
携帯発電機は、屋内、車内、テント、物置、閉め切ったガレージなどでは絶対に使用しないでください。排気ガスに含まれる一酸化炭素は無色・無臭で、気づかないうちに中毒となり、死亡事故につながる危険があります。
屋外で使用する場合も、窓、出入口、給気口などから排気ガスが建物内へ入らないよう十分に離し、風雨が直接かからず、排気がこもらない場所で、取扱説明書に従って使用します。また、運転中や停止直後に燃料を補給すると、こぼれた燃料が高温部分に触れて引火するおそれがあります。燃料の補給は発電機を停止し、本体が十分に冷えたことを確認してから行ってください。
延長コードや電源タップに多くの機器を接続すると、許容電流を超えて発熱することがあります。また、発電機を建物側のコンセントへ直接接続する、いわゆる「逆送電」は、感電、火災、設備の損傷などにつながる危険があるため行わないでください。
非常用電源を使用するときは、接続できる機器、定格出力、接続方法を事前に確認し、必ず取扱説明書に従います。
停電時の明かりには、ろうそくよりもLEDランタンや懐中電灯を優先してください。やむを得ずろうそくを使う場合は、金属製や陶磁器製などの安定した不燃性の台に置き、カーテンや紙類などの燃えやすい物から離します。その場を離れたり、火をつけたまま眠ったりしてはいけません。
カセットこんろを使用するときは、カセットボンベを正しく装着し、こんろを覆うような大きな鍋や鉄板を使用しないこと、2台以上を並べて使用しないことが重要です。

強風時は小さな火でも急速に拡大する
台風による強風は、火災の延焼を早める要因になります。火の粉が風に運ばれ、離れた場所で新たな火災が起こる「飛び火」にも注意が必要です。
台風が接近しているときは、屋根のある場所でも、屋外でのたき火、ごみの焼却、バーベキューなどは行わないでください。屋外での喫煙も、火種や吸い殻が飛ばされる可能性があるため控えます。
強風が吹き始めてから、屋根、ベランダ、屋外設備などの補強作業を行うことも危険です。植木鉢、ごみ箱、看板、資材などは、風が強くなる前に屋内へ移動するか、確実に固定してください。
飛来物によって配線、ガス設備、燃料容器などが損傷することもあります。設備の周囲に飛ばされやすい物を残さないようにしましょう。
台風が来る前に確認しておきたい防火対策
台風対策は、雨や風が強くなる前に終えておくことが基本です。家庭では、懐中電灯やLEDランタン、乾電池、携帯電話の予備電源を準備し、分電盤の位置と操作方法を確認しておきます。コンセント周辺にほこりや水気がないか、電源コードに傷や変形がないかも確認してください。
浸水が想定される場所では、移動できる家電製品、電源タップ、ポータブル電源などを、可能な範囲で高い場所へ移します。ただし、重い機器を無理に動かしてけがをしないことも大切です。
屋外の看板、段ボール、廃棄物、工事資材などは、必要に応じて固定するか、屋内へ移動します。
LPガスを使用している場合は、容器がチェーンやベルトなどで固定されているか、周囲に飛ばされやすい物がないかを目視で確認します。固定の緩みや配管の異常などがある場合は、自分で容器を動かさず、LPガス販売店へ連絡してください。
事業所では、電気室、機械室、非常用発電設備などに浸水のおそれがないかを確認します。必要に応じて止水板や土のうなどを準備しますが、避難口や避難通路をふさがないよう、配置にも注意が必要です。
台風通過後も、すぐに通常運転へ戻さない
雨や風が収まっても、建物や設備の安全が確認できるまでは、すぐにすべての電源を入れないでください。
まず、確認できる範囲で、浸水、雨漏り、焦げ跡、異臭、配線の損傷、機器の転倒や変形などがないかを確認します。水が残っている場所や浸水した電気室には、むやみに立ち入らないでください。切れたり垂れ下がったりしている電線には絶対に近づかず、電力会社へ連絡します。
建物内に浸水や雨漏りがあった場合や、分電盤、コンセント、配線などが水にぬれた可能性がある場合は、自己判断でブレーカーを戻さず、電気工事業者などへ点検を依頼してください。
浸水などの被害を免れた電気機器についても、電源プラグやコードの損傷、焦げ跡、変形などがないことを確認し、1台ずつ様子を見ながら使用します。
焦げ臭いにおい、異常な音、過度な発熱などを感じたときは、直ちに使用を中止してください。安全に操作できる状況であれば電源プラグを抜くかブレーカーを切り、メーカー、販売店、電気工事業者などへ相談します。
事業所では、担当者の判断だけで設備を再稼働させず、必要に応じて電気工事業者、設備業者、メーカーなどの点検を受けます。防火設備や避難経路についても、浸水や飛来物による損傷、物品による閉鎖障害などがないかを確認してから、通常運用へ戻してください。
火や煙を発見した場合は、周囲へ知らせ、速やかに119番通報します。初期消火は、自身の安全と避難経路が確保できる場合に限って行い、煙や火勢が強い場合は、消火にこだわらず安全な場所へ避難してください。
台風による火災を防ぐため、平時の備えを整え、停電・浸水・強風の各場面で安全を最優先に行動しましょう。









