防火管理者が退職・異動で不在に?必要な4つの対応手順

退職・人事異動で防火管理者がいない⁉
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人事異動や組織変更、店舗責任者の交代、突然の退職などをきっかけに、防火管理者が不在になっていることに後から気づく場合があります。また、後任者に防火管理講習を受講してもらう予定であっても、すぐには受講できず、選任までに時間がかかるケースも少なくありません。

しかし、防火管理者の選任が必要な建物や事業所では、不在の状態をそのまま放置することはできません。

防火管理者は、消防署へ名前を届け出るだけの役職ではなく、建物や事業所の防火管理を実際に進める責任者です。人事異動や退職によって防火管理者が職務を続けられなくなる場合は、空白期間をつくらず、後任者の選任と実務の引き継ぎを進める必要があります。

今回は、防火管理者が不在になったときに必要な手続き、やってはいけない対応、社内選任を継続するための体制、外部委託という選択肢について解説します。

防火管理者は選任・届出だけでは不十分|消防法上の主な責務

消防法第8条では、一定の防火対象物の管理について権原を有する「管理権原者」に対して、資格を有する防火管理者を選任し、防火管理上必要な業務を行わせることを求めています。ここで重要なのは、防火管理者を選任するだけでなく、防火管理上必要な業務を実際に行わせることまでが求められている点です。

防火管理者の主な責務には、次のようなものがあります。

  • 防火管理に係る消防計画の作成・届出
  • 消火・通報・避難訓練の実施
  • 消防用設備等の点検・整備
  • 火気の使用または取り扱いに関する監督
  • 避難または防火上必要な構造・設備の維持管理
  • 収容人員の管理
  • その他、防火管理上必要な業務
  • 必要に応じて管理権原者に指示を求め、誠実に職務を遂行すること

防火管理者は、建物の状況を把握し、消防計画に沿って必要な対策を継続的に実施する役割を担っています。

《出典》東京消防庁「管理権原者とは・防火管理者とは」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jissen/p03.html

防火管理者が退職・人事異動したときの4つの対応手順

防火管理者が退職や人事異動によって職務を続けられなくなった場合は、後任者を選任し、遅滞なく管轄消防署へ選任・解任の届出を行います。

「退職後、一定期間は防火管理者がいなくてもよい」という一律の猶予期間が設けられているわけではありません。退職や異動が事前に分かっている場合は、その日までに後任者を決め、空白期間が生じないよう準備することが原則です。

東京消防庁も、人事異動などで防火管理者が変更となる場合には、選任・解任の届出が必要であると案内しています。また、防火管理者の変更に伴って消防計画を修正した場合は、消防計画の変更届出も必要です。

《参考》東京消防庁「防火・防災管理に関する届出について」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/fs/meguro/page_00042.html

具体的には、次の順序で対応します。

1.前任者が職務を終える日を確認する
退職日、異動日、店舗責任者の交代日などを確認し、いつから防火管理者が不在になるのかを明確にします。人事異動や退職が決まった時点で防火管理者の変更が必要かを確認し、早めに後任者の選定を始めることが重要です。

2.後任候補者の資格と立場を確認する
甲種または乙種防火管理講習の修了者など、防火管理者として必要な資格を持つ人が社内にいるかを確認します。ただし、資格を持っているだけでは十分ではありません。防火管理業務を実際に行うことができ、必要な指示や改善を進められる、管理的または監督的な立場にあることも必要です。なお、乙種防火管理者を選任できる建物は用途や規模が限定されるため、対象となる建物に必要な資格区分を確認しなければなりません。

3.消防計画や訓練記録などを引き継ぐ
前任者から、消防計画や訓練記録、消防署とのやり取り、避難経路上の問題、過去の指摘事項などを引き継ぎます。書類上の名前を変更するだけでは、過去の経緯や建物の実情を把握できず、適切な防火管理を継続することはできません。そのため、書類だけでなく、実際に行ってきた業務や未解決の課題まで確実に引き継ぐことが極めて重要です。

ただし、前任者が防火管理者として必要な業務を十分に行っていなかった場合は、引き継ぐだけでは不十分です。消防計画、訓練の実施状況、消防用設備や避難経路の状況などを改めて確認し、防火管理体制を整え直す必要があります。

4.消防署へ選任・解任の届出を行う
防火・防災管理者選任(解任)届出書に、資格を証する書類などを添えて管轄消防署へ提出します。消防計画に防火管理者名や自衛消防体制などが記載されており、その内容を修正した場合は、消防計画の変更届出も行います。地域や建物の状況によって必要書類や取り扱いが異なる場合があるため、不明な点は事前に管轄消防署へ確認すると確実です。

防火管理者が退職・人事異動したときの4つの対応手順

防火管理者を名義だけで選任してはいけない理由

後任者が見つからないときに、最も避けなければならないのが、誰かに防火管理講習を受講させ、選任届だけを提出して、実際の防火管理業務を行わせないことです。

例えば、次のような状態です。

  • 防火管理者本人が消防計画の内容を把握していない
  • 避難経路や消火器などの設置場所を確認していない
  • 消防訓練の計画や実施に関与していない
  • 消防用設備等の点検結果を確認していない
  • 避難経路に物が置かれていても改善を求められない
  • 消防署から連絡があっても対応できない

これでは、形式上は防火管理者が選任されていても、実態として防火管理体制が機能しているとはいえません。防火管理者には、避難経路上の障害物を除去する、必要な訓練を実施する、不適切な火気使用を是正するなど、防火管理業務を進めるための権限が必要です。

従業員に資格を取得させること自体に問題はありません。問題なのは、資格取得と選任をゴールにしてしまい、その後の業務を本人任せにしたり、必要な時間や権限を与えなかったりすることです。

万が一火災が発生した際には、届出の有無だけでなく、消防計画に基づく訓練や日常の防火管理が実際に行われていたかも重要になります。防火管理者を名目だけの存在にすることは、建物利用者の安全を損なうだけでなく、企業や管理権原者にとっても大きなリスクとなります。

防火管理者を社内選任する場合に必要な体制

社内に適任者がいて、継続的に防火管理業務を行える場合は、社内から選任する方法が基本です。ただし、防火管理者一人にすべてを任せるのではなく、会社として業務に取り組むための時間と必要な権限を与えなければなりません。

通常業務の忙しさを理由に消防訓練を後回しにしたり、前任者が作成した消防計画を見直さずに保管したままにしたりする運用では、防火管理者を選任していても実務が形骸化してしまいます。

防火管理者に選任された従業員は、通常業務と並行して、消防計画の作成・見直し、火災予防上の自主点検、不適切な状況の是正などに取り組む必要があります。また、消防計画に定めた回数の消火・通報・避難訓練を計画し、実際に実施する必要があります。

《参考》東京消防庁「自衛消防訓練を実施しましょう」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/fs/marunouti/jiei.html

人事異動が頻繁な企業では、複数名に資格を取得させておく方法もあります。ただし、資格者が複数いても、異動や退職のたびに選任・解任の手続きと実務の引き継ぎが必要になることに変わりはありません。

防火管理者を外部委託する3つのメリット

社内で防火管理者を継続的に確保することが難しい場合には、外部委託も選択肢になります。外部委託には以下のようなメリットがあります。

1.人事異動や退職に左右されにくい
社内の担当者が異動・退職しても、外部の防火管理者との委託関係が継続していれば、防火管理体制を維持しやすくなります。店舗責任者の交代が多い企業や、常駐する管理職がいない建物では、特に大きな利点となります。

2.必要な防火管理業務を継続できる
適切な外部委託先であれば、防火管理者として選任されるだけでなく、建物の巡回確認、消防計画の作成・見直し、消防訓練、消防署との連絡調整、査察への立会いなど、必要な防火管理業務を継続的に行います。重要なのは、外部の人の名前を借りることではなく、防火管理の実務を外部委託先が継続して担うことです。

3.従業員が本来の業務に集中できる
防火管理者に選任された従業員は、通常業務と並行して、防火管理者に必要な実務を行わなくてはいけませんが、これらの業務を適切に外部委託することで、従業員が本来の業務に集中しやすくなり、防火管理業務の属人化も防ぐことができます。

防火管理者を外部委託する3つのメリット

防火管理者の外部委託が認められる条件と注意点

防火管理者の外部委託は、どの建物でも自由に利用できる制度ではありません。防火対象物のうち、管理的または監督的な立場にある人が防火管理上必要な業務を適切に行うことが困難であると、消防長または消防署長が認めたものが対象となります。そのため、外部委託を検討する場合は、契約や届出を進める前に、外部委託の可否を管轄消防署へ確認する必要があります。

また、外部の防火管理者には、消防計画の作成・変更、消防訓練の実施、避難障害物の除去、火気使用に関する不適切な状況の是正など、必要な業務を行うための権限を与えなければなりません。

あわせて、建物の構造や設備、利用状況、従業員の配置などについて十分に説明し、外部の防火管理者が建物の実態を把握できる環境を整えることも必要です。

なお、外部委託をしても、建物や事業所の管理権原者としての責任までなくなるわけではありません。管理権原者は防火管理の最終責任者であり、外部の防火管理者が適切に業務を行えるよう指示・監督する必要があります。現地の関係者が必要な情報を提供し、指摘事項の改善に協力することで、初めて適切な防火管理が実現します。

防火管理者の外部委託先は「現地対応力」で選ぶ

外部委託先を料金の安さだけで選ぶことには注意が必要です。

契約内容を確認し、防火管理者として選任されるだけでなく、建物の巡回、消防訓練、消防署との連絡調整、査察への立会いなど、必要な防火管理業務を継続して行える体制が整っているかを確認することが重要です。

防火管理者の業務には、避難経路や防火設備の状況を確認するなど、現地の実情を把握しなければ適切に行えないものが含まれます。法令で一律の巡回回数が定められているわけではありませんが、委託先を選ぶ際は、定期的な巡回や消防訓練、消防署の査察への立会いなど、必要な場面で現地対応できる体制があるかを確認する必要があります。

外部委託先を選ぶ際のポイントについては、コラム「防火管理者代行は現地対応力で選ぶ|他社との4つの違い」で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

まとめ|防火管理者の不在を防ぎ、継続できる体制をつくる

防火管理者の変更は、単なる人事上の事務手続きではありません。建物を利用する人の安全に直結する問題です。退職や人事異動が決まってから慌てて後任者を探すのではなく、平時から次の事項を整理しておくことが重要です。

  • 現在の防火管理者と資格区分
  • 退職や異動によって不在になる可能性
  • 社内の資格保有者
  • 消防計画と消防訓練の実施状況
  • 消防用設備等の点検結果と指摘事項
  • 後任者への引き継ぎ方法
  • 外部委託の必要性

人事異動や退職のたびに防火管理体制が途切れてしまう場合は、社内選任だけにこだわらず、外部委託も含めて、長期的かつ安定的に防火管理業務を継続できる仕組みを検討することが有効です。

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