令和8年熊本地震から考える地震火災対策

通電火災を防ぐ備え
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令和8年熊本地震の概要と現在の地震活動

2026年7月28日16時27分ごろ、熊本県熊本地方の深さ16キロメートルを震源とするマグニチュード7.1(暫定値)の地震が発生し、熊本県宇城市と氷川町で最大震度7を観測しました。

気象庁は、この地震とその後に発生した一連の地震活動を「令和8年熊本地震」と命名しています。この地震の後、8月1日までに最大震度5弱を観測する地震が5回発生しました。

気象庁は8月10日の発表で、地震の発生数は大局的には緩やかに減少しているものの、地震活動は依然として活発な状態が続いているとしています。また、強い揺れを観測した地域では、8月10日から1か月程度、最大震度5弱程度以上の地震に注意するよう呼びかけています。

《参考》気象庁「令和8年熊本地震ポータルサイト」
https://www.jma.go.jp/jma/menu/20260728_kumamoto_jishin.html

このたびの地震により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

大きな地震では、建物の倒壊や家具の転倒だけでなく、地震に伴って発生する火災にも注意が必要です。地震そのものを防ぐことはできませんが、地震火災の危険は、事前の備えと地震後の適切な行動によって減らすことができます。

本記事では、令和8年熊本地震における個別の火災事例を検証するのではなく、今回の地震を受け、家庭や事業所で確認しておきたい一般的な地震火災対策を紹介します。

地震火災が大きな二次災害になりやすい理由

通常の火災であれば、消防への通報、初期消火、消防隊による消火活動という対応が期待できます。しかし、大規模地震では、複数の場所で同時に火災が発生し、消防力が不足する可能性があります。

さらに、道路の損傷や建物の倒壊によって消防車が現場に近づけない、断水によって消火栓が使用できないなど、消火活動が難しくなることも考えられます。

一つひとつは小さな火災でも、初期消火が遅れ、強風や建物の密集といった条件が重なると、周囲の建物へ燃え広がる危険があります。そのため、地震火災では「火が出てから消す」だけでなく、「できるだけ火を出さない」ための対策が特に重要です。

揺れている最中は、火の始末より身の安全を優先する

地震が発生したとき、最初に行うべきことは、自分自身の安全を確保することです。

強く揺れている最中に無理にコンロやストーブへ近づくと、転倒した家具、落下物、割れたガラスなどによって負傷するおそれがあります。揺れを感じたら、まずは丈夫な机の下など、物が落ちてこない、倒れてこない場所で身を守ります。

火を使用していた場合も、揺れが収まってから周囲の安全を確認し、無理のない範囲で火を消してください。揺れている最中に移動することは、かえって危険です。

揺れが収まった後は、避難経路を確保し、コンロ、暖房器具、電気製品などの状態を確認します。ただし、建物の傾き、天井や壁の落下、余震などの危険がある場合は、火元の確認に固執せず、避難を優先してください。

特に注意したい「通電火災」

地震後の火災で特に注意したいのが、電気に起因する火災です。

地震の揺れによって家具が倒れ、電源コードが押しつぶされたり、配線が損傷したりすることがあります。また、転倒した電気ストーブや照明器具に、カーテン、衣類、紙類などの燃えやすいものが接触する可能性もあります。

地震直後に停電した場合、その時点では火災が発生していないように見えることがあります。しかし、避難後に電気が復旧すると、損傷した配線や転倒した電気器具に再び電気が流れ、発熱やショートによって出火する場合があります。これが一般に「通電火災」と呼ばれるものです。

消防庁によると、近年の大規模地震では、電気に起因する火災が多く発生しています。東日本大震災の本震による火災でも、出火原因が特定されたもののうち、過半数が電気に起因する火災でした。

避難する場合は、安全に操作できる状況であれば、電気製品のスイッチを切り、可能な範囲で電源プラグを抜き、住宅のブレーカーを落とします。

ただし、煙や火炎が発生している場合や、分電盤に近づくこと自体が危険な場合は、ブレーカーの操作よりも避難を優先してください。

停電しているから安全だと思い込まず、「電気はいずれ復旧する」という前提で行動することが大切です。

《参考》総務省消防庁「地震火災対策について」
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r2/chapter1/section1/para3/56542.html

電気が復旧しても、すぐにすべての機器を使わない

避難先から自宅や事業所へ戻ったときも、すぐにブレーカーを入れたり、電気製品を使い始めたりせず、まず安全を確認します。

主な確認箇所は次のとおりです。

  • 電源コードや延長コードが家具の下敷きになっていないか
  • コンセント、配線、分電盤に変形、焦げ、破損がないか
  • 電気ストーブや照明器具の周囲に可燃物が接触していないか
  • 電気製品が転倒または浸水していないか
  • ガス漏れや灯油漏れが発生していないか

安全を確認して再通電した後も、しばらくは煙、焦げ臭いにおい、異常な音、発熱などがないか注意します。

異常を感じた場合は、安全に操作できることを確認してからブレーカーを落とし、速やかに避難してください。煙や火が確認できる場合は119番へ通報し、必要に応じて電力会社、電気工事業者、製品メーカーなどへ相談します。

再通電してから時間がたった後に火災が発生する場合もあるため、復電後すぐに外出することは避け、しばらく異常がないか確認することが大切です。

浸水した電気製品は、乾いているように見えても、内部に水分が残っていたり、泥や塩分などの異物が付着していたりする可能性があります。自己判断で再使用せず、メーカーや販売店に相談し、必要な点検や修理を受けてください。

《参考》
総務省消防庁「地震火災への備え」
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r5/report7/68438.html

《参考》経済産業省「地震に伴う製品事故に注意!」
https://www.meti.go.jp/press/2023/02/20240229001/20240229001.html

避難先から自宅や事業所へ戻ったときも、すぐにブレーカーを入れたり、電気製品を使い始めたりせず、まず安全を確認します。

ガスのにおいがしたら、電気のスイッチに触れない

地震では、ガス機器や配管が損傷する可能性もあります。ガスのにおいを感じた場合は、ライター、たばこ、ろうそくなどの火を絶対に使用しないでください。

照明や換気扇などの電気スイッチは、入れるときだけでなく、切るときにも火花が発生する可能性があります。電気スイッチには触れず、火花が生じる可能性があるため、電源プラグの抜き差しも避けてください。

可能であれば、電気を使用せずに窓や扉を開けて換気し、安全に操作できることを確認したうえでガス栓やメーターガス栓を閉めます。その後は建物から離れ、安全な場所からガス事業者へ連絡してください。火災が発生している場合や、差し迫った危険がある場合は119番へ通報します。

石油ストーブやファンヒーターを使用していた場合は、本体の転倒だけでなく、タンクや配管から灯油が漏れていないかも確認します。油漏れがある状態で、火気や電気器具を使用してはいけません。

初期消火は「安全にできる範囲」だけ

地震後に火災を発見した場合は、大きな声で周囲に知らせ、非常ベルなどの火災報知設備があれば作動させ、119番へ通報します。そのうえで、火がまだ小さく、避難経路が確保されている場合に限り、消火器などを使用して初期消火を行います。

消火器による初期消火は、炎が天井に達する前までが一つの目安です。炎がすでに天井に達している場合や、室内全体へ燃え広がり始めている場合は、消火を続けず、直ちに避難してください。また、煙が急速に広がっている、爆発のおそれがある、消火器を使用しても火が消えないなど、危険を感じた場合も避難を優先します。

避難する際は、姿勢を低くして煙を避けます。一度避難した後は、貴重品や荷物を取りに建物へ戻らないことも重要です。

日頃から準備しておきたい地震火災対策

地震火災を防ぐためには、地震発生時の行動だけでなく、平常時の準備が欠かせません。

まず検討したいのが「感震ブレーカー」です。感震ブレーカーは、地震の揺れを感知して電気を遮断する機器で、外出中に地震が発生した場合や、避難時にブレーカーを落とす余裕がない場合の電気火災対策として有効です。

ただし、感震ブレーカーには分電盤タイプ、コンセントタイプ、簡易タイプなどがあり、遮断する範囲や作動方法が異なります。設置すれば、すべての電気火災を防げるわけではありません。

作動すると照明や在宅医療機器なども停止する場合があります。懐中電灯、停電時に点灯する足元灯、必要な予備電源を用意したうえで、住宅や事業所に適した種類を選ぶ必要があります。

このほか、次の対策も有効です。

  • 家具や電気製品を固定し、転倒や配線の損傷を防ぐ
  • ストーブやコンロの周囲に燃えやすい物を置かない
  • 安全装置が付いた暖房器具や調理器具を使用する
  • 消火器を取り出しやすい場所に設置し、使用方法を確認する
  • ブレーカー、ガスの元栓、消火器の場所を家族や従業員で共有する
  • 避難場所と避難経路を確認する
  • 地域や勤務先の防災訓練に参加する

《参考》総務省消防庁「感震ブレーカーの効果と種類」
https://www.fdma.go.jp/relocation/html/life/yobou_contents/earthquake-sensitive_breaker/items/breaker_type.pdf

事業所では個人の判断だけに頼らない体制が必要

事務所、店舗、共同住宅などでは、地震発生時の対応を、防火管理者や一部の担当者だけに任せきりにせず、担当者が不在の場合でも対応できる体制を整えておくことが重要です。

誰が火元を確認するのか、誰が119番へ通報するのか、誰が避難誘導を行うのか、担当者が不在の場合は誰が代行するのかを、あらかじめ消防計画や社内の対応手順に定め、関係者へ周知しておきます。

また、消火器、火災報知設備、ガスの元栓、非常口の場所等を従業員が把握しているか確認します。廊下、階段、防火戸の周囲には物を置かず、地震によって収納物が落下しても、避難経路を完全にふさがないようにすることも重要です。

地震火災は、発生前の準備で被害を減らせる

大地震の直後は、誰もが混乱します。その場で正しい行動を考えようとしても、落ち着いて判断できるとは限りません。

だからこそ、揺れが収まってから火元を確認すること、避難時にブレーカーを落とすこと、復電後は電気製品や配線の状態を確認することを、平常時から繰り返し確認しておく必要があります。

地震の発生を防ぐことはできません。しかし、地震を火災という二次災害につなげないための準備はできます。

家庭でも事業所でも、「火を出さない」「早く気づく」「安全な範囲で消す」「危険ならすぐに避難する」という基本を共有し、実際に行動できる状態にしておくことが重要です。

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