車両火災を防ぐ点検と対処法
酷暑が続くなか、走行中のタイヤのパンクやバースト、車両火災に関する個別の事例が報じられ、道路会社からも注意喚起が行われています。ただし、報道された事例だけをもって、暑さが原因のバーストが全国的に増加していると断定することはできません。個々のトラブルには、空気圧不足、タイヤの劣化や損傷、積載状況、走行方法など、さまざまな要因が関係します。
首都高速道路株式会社は2026年8月4日、首都高上の車両火災について注意を呼びかけました。同社によると、交通事故を原因とするものを除いた車両火災は、2026年度の5月に3件、7月に2件発生しています。また、気温の上昇に伴って車両火災の危険が高まる傾向があり、タイヤのバーストから火災に至る場合もあると説明しています。
JAFの2025年度の集計では、高速道路における四輪車のロードサービス出動件数6万1,298件のうち、「タイヤのパンク・バースト・エアー圧不足」は2万6,985件で、全体の44.02%を占めています。ただし、これは年間を通じたタイヤトラブルの合計です。すべてが猛暑やバーストによるものではなく、暑さを原因とする件数を示した統計でもありません。
《参考》[首都高速道路株式会社「首都高上での車両火災が急増しています!」
https://www.shutoko.jp/news/2026/data/08/04-vehiclefire/
《参考》[JAF「よくあるロードサービス出動理由」
https://jaf.or.jp/common/about-road-service/frequency
タイヤのバーストとは
パンクは、釘などの異物が刺さり、徐々に空気が抜ける状態を指すのが一般的です。一方、バーストは、走行中にタイヤが破裂し、短時間で空気が失われる現象です。発生すると、大きな音や激しい振動が生じ、車体が左右に振られることがあります。
特に高速走行中は、車両の姿勢を保つことが難しくなります。驚いて急ブレーキや急ハンドルを行うと、スピンや横転、他車との衝突につながる危険があります。破損したタイヤの破片が飛散し、後続車に影響を及ぼす可能性もあります。
真夏の高温は、タイヤにとって厳しい条件です。しかし、適切に整備されたタイヤが、気温の高さだけで直ちに破裂するとは限りません。空気圧不足、経年劣化、ひび割れや傷、過大な荷重、高速での連続走行などが重なることで、バーストの危険が高まります。
特に注意したいのが空気圧不足です。空気圧が不足したタイヤは、路面に接するたびに大きくたわみます。その状態で高速走行を続けると、タイヤの側面が波打つように変形する「スタンディングウェーブ現象」が起こることがあります。
変形が繰り返されると内部に熱が蓄積し、構造のはく離や損傷が進んで、バーストに至るおそれがあります。
夏は外気温や路面温度が高く、走行で生じた熱が加わります。そのため、空気圧が不足しているタイヤや、劣化・損傷しているタイヤでは、高温が危険を増幅させる要因になります。猛暑は単独の原因というより、もともと存在する不具合や厳しい使用条件を深刻化させる要因と考えるのが適切です。
一方、暑いからといって指定値を超えて空気を入れることも避けなければなりません。車両ごとに定められた指定空気圧に調整し、走行条件に応じた指示がある場合は、取扱説明書などに従ってください。

バーストが車両火災につながる場合
タイヤがバーストしても、必ず車両火災になるわけではありません。まず問題となるのは、車両の制御を失うことや、路上で動けなくなることによる二次事故です。ただし、破損したまま走行を続けるなど、一定の条件が重なると、火災に発展する可能性があります。
空気を失ったタイヤや剥がれたゴムが、路面、ホイール、車体などと強く擦れ続けると、摩擦によって高温になることがあります。破損した部材がマフラーなどの高温部に接触すれば、発煙や出火につながるおそれもあります。
また、タイヤそのものではなく、ブレーキの引きずりやホイールハブの不具合が先に発生し、周辺が過熱してタイヤへ燃え移る場合もあります。トラックやバスなどの大型車は車重や積載量が大きく、複輪タイヤの一方に異常が起きると、残るタイヤに負荷が集中する点にも注意が必要です。
「ゴトゴト」という異音、普段と異なる振動、車体が片側へ引かれる感覚、焦げたようなにおい、タイヤ付近の煙などを感じたら、走行を続けてはいけません。火が見えない段階で安全な場所に停止することが、事故や火災を防ぐ重要な判断になります。
出発前に確認したい6つのポイント
1.空気圧はタイヤが冷えた状態で測る
空気圧は少なくとも月に1回、エアゲージで確認します。高速道路の利用前や長距離走行の前にも点検してください。指定空気圧は、一般に運転席側のドア付近の表示や取扱説明書で確認できます。
点検は、タイヤが冷えている走行前に行うのが基本です。走行後はタイヤが温まり、空気圧が高く表示されます。この状態を見て空気を抜くと、タイヤが冷えた際に空気圧不足になるため、走行直後に自己判断で空気を抜いてはいけません。
2.傷、ひび割れ、ふくらみを確認する
接地面だけでなく、タイヤの側面も確認します。異物、深い傷、ひび割れ、局所的なふくらみ、ワイヤーの露出、偏った摩耗などがある場合は、無理に走行せず、販売店や整備事業者に相談してください。縁石や大きな段差に乗り上げた後は、外見上の異常が小さくても内部が損傷している可能性があります。
3.溝と使用年数を確認する
スリップサインが現れたタイヤは使用限度に達しています。また、日本自動車タイヤ協会は、使用開始後5年以上経過したタイヤについて、専門店などによる点検を受けることを勧めています。外観に問題がないように見えても、製造後10年を経過したタイヤは交換が推奨されています。いずれも目安であり、5年または10年に達していなくても、傷や劣化の状態によっては早めの交換が必要です。
《参考》日本自動車タイヤ協会「安全に乗るために」
https://www.jatma.or.jp/tyre_user/ridingsafely.html
4.荷物を積み過ぎず、偏らせない
乗車人数や荷物が増えるほど、タイヤにかかる荷重は大きくなります。貨物車では最大積載量を守り、乗用車では乗車定員や取扱説明書に示された使用条件を確認してください。荷物を片側に偏らせず、走行中に動かないよう固定することも大切です。
5.タイヤ以外の異常も確認する
車両火災の原因はタイヤだけではありません。首都高速道路株式会社は、首都高で発生する車両火災について、オーバーヒートやオイル漏れによるエンジン部からの出火が多い傾向にあると説明しています。冷却水やエンジンオイル、警告灯、車両の下に油や液体が漏れた跡がないかも確認しましょう。
エンジンが熱い状態でラジエーターキャップを開けると、熱い蒸気や冷却水が噴き出す危険があるため、取扱説明書に従い、無理に開けてはいけません。
6.緊急用品を確認する
三角表示板、発炎筒、パンク応急修理キット、スペアタイヤの有無と状態を確認します。修理剤や発炎筒には有効期限があります。自動車用消火器を備える場合は、対応する火災の種類、使用期限、固定方法を確認し、走行中に動かないよう確実に固定してください。
走行中にバーストした場合の対処法
突然大きな音がして車体が揺れても、急ブレーキや急ハンドルは避けます。ハンドルを両手でしっかり持って進行方向を保ち、ハザードランプを点灯します。アクセルからゆっくり足を離し、徐々に速度を落として、非常駐車帯や路肩など、できるだけ安全な場所に停止します。
高速道路では、停車した車内にとどまることも危険です。安全を確認して車外へ出て、乗員全員がガードレールの外側など、車両より後方の安全な場所へ避難します。発炎筒や三角表示板による後続車への合図は、設置する人の安全を確保できる範囲で行ってください。
その後、非常電話、道路緊急ダイヤル「#9910」、110番、ロードサービスなどへ連絡します。高速道路上でのタイヤ交換や応急修理は二次事故の危険が高いため、自分で作業せず、救援を待つのが基本です。
すでに煙や炎が出ている場合は、三角表示板の設置や荷物の持ち出しよりも避難を優先します。安全に操作できる場合はエンジンを停止し、全員が車両から十分に離れたうえで119番へ通報してください。
消火器を使用するのは、火がごく小さく、退路が確保され、自身を危険にさらさず対応できる場合に限ります。炎や煙が広がっている場合は近づかず、消防隊の到着を待ってください。
猛暑をきっかけに基本的な点検を見直す
猛暑は、タイヤバーストや車両火災の危険を高め得る条件の一つです。しかし、実際のトラブルは、空気圧不足、劣化、傷、過大な荷重、長時間の高速走行、点検不足など、複数の要因が重なって発生します。暑さだけを原因と考えるのではなく、車両の状態と使い方を総合的に確認することが大切です。
タイヤは、見た目だけでは空気圧不足や内部損傷を判断できない場合があります。「前回の車検で問題がなかった」「まだ溝が残っている」という理由だけで安心せず、月1回の空気圧確認と、長距離走行前の目視点検を習慣にしましょう。
異音や振動、焦げたにおいなどの異常を感じたら、火が出る前に安全な場所へ停止する。煙や炎が出たら、車や荷物よりも人命を優先して離れる。この2つの判断を家族や職場で共有し、夏の移動に備えることが重要です。








