大雨・浸水後の火災原因とは?電気設備の対策と復旧時の注意点

エルニーニョの年に考える火災対策
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顕著なエルニーニョの年に考える――大雨・浸水後の建物火災対策

雨が降っているときに「火災」と聞くと、意外に感じるかもしれません。しかし、大雨によって建物内に入り込んだ水が電気設備や電気製品に触れると、雨がやんだ後も火災につながるおそれがあります。特に注意したいのは、浸水した設備を使用したり、停電から復旧した際に電気が流れたりする場面です。

気象庁によると、2026年春からエルニーニョ現象が続いているとみられ、同年8月の監視海域の海面水温は、8月として1949年以降で最も高い値を記録しました。一方、特に当社の本社がある東京都渋谷区では、9月に入ってから雨の日が多いと感じますが、エルニーニョ現象の年に日本全国で必ず雨が増えるわけではありません。

気象庁の統計では、秋の降水量に全国共通の明瞭な傾向はなく、2026年夏には西日本を中心に少雨となった時期もありました。気象現象の名前だけで雨量を予測するのではなく、地域ごとの気象情報と建物の浸水リスクを確かめることが大切です。

今回は、マンションやオフィスビル、店舗などを管理する方に向けて、大雨と火災の意外な関係、そして雨の前後に確認したいポイントを整理します。

雨水が火災につながるのはなぜか

建物への雨水の入り方はさまざまです。屋上や外壁からの雨漏り、窓際からの浸入、地上の出入口や地下への流入などがあります。雨漏りが起きた場所の近くに照明器具、コンセント、電源タップなどがあれば、水が電気の通り道に入り込む可能性があります。

また、浸水した電気製品は、表面が乾いて見えても内部に水が残っていたり、泥などの異物が付着していたりします。製品評価技術基盤機構(NITE)は、雨漏りや浸水で水がかかった電気製品が火災を引き起こすおそれを指摘しています。水に濡れた機器を「乾いたから大丈夫」と判断して使い始めることは避けましょう。

火災の危険は、水に浸かった家電だけに限りません。プラグとコンセントの間にたまったほこりに水分が付着すると、ショートやトラッキング現象につながることがあります。普段は目につきにくい場所も含め、電源まわりに水や湿気が及ばない状態を保つことが基本です。

例えば、共用廊下の天井から水が落ちている場合、床の水滴だけを拭き取って終わりにすると、天井内の配線や照明器具が濡れた可能性を見逃すかもしれません。テナント内でも、窓際の雨漏りが電源タップやパソコン周辺に達することがあります。水がどこから入り、どこへ流れたかをたどり、電気に関わる場所へ達していないかを確認する視点が必要です。濡れた機器を発見したら、無理に触らず、管理担当者に状況を伝えましょう。

地下の電気設備が浸水すると、建物全体に影響する

オフィスビルやマンションなどでは、地下に受変電設備や分電盤が設けられていることがあります。雨水が地下へ流れ込んでこれらの設備が浸水すると、停電によってエレベーターや給水設備などが使えなくなる場合があります。

実際に、2019年の東日本台風では、高層マンションの地下にある高圧受変電設備が冠水し、エレベーターや給水設備が一定期間使えなくなりました。この被害を踏まえ、国土交通省と経済産業省は「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を公表しています。

ここで区別したいのは、「浸水によって停電すること」と「浸水・損傷した設備に通電することで火災が起こり得ること」です。浸水した受変電設備が必ず発火するという意味ではありません。ただ、急いで電気を戻したい状況ほど、安全を確かめずに設備を再使用しないことが重要になります。設備の種類や被害の程度によって必要な対応は異なるため、復旧の判断は電気工事業者などの専門家と行います。

大雨で水が流れ込む建物の地下入口と、奥にある電気設備室のイメージ

大雨の前に、建物の「水の入り口」を確認する

対策は、大雨が始まってからでは間に合わないことがあります。まず、自治体のハザードマップなどで建物周辺の浸水想定を確認し、地下の電気室や機械室、分電盤の位置と照らし合わせましょう。敷地の出入口だけでなく、地下への階段、換気口、配管が通る場所など、水が入る可能性のある箇所も確認します。

建物に止水板や防水扉がある場合は、設置場所と作動方法を関係者で共有しておきます。脱着式の止水板であれば、誰が、いつ、どの道具を使って設置するのかまで決めておくと、実際の対応につながります。国のガイドラインでも、必要な人員や時間を踏まえた事前確認と訓練の重要性が示されています。

点検の際は、雨漏りを「今回だけの現象」として片付けないことも大切です。大雨の後に同じ天井に染みが現れる、特定の出入口から繰り返し水が入る、地下の排水が追いつかないといった記録は、次の雨への備えに役立ちます。発生した日時、場所、浸水の範囲、写真、対応した業者などを残し、所有者や管理会社と修繕の優先順位を相談します。記録があれば、電気設備に近い箇所から対応すべきかも判断しやすくなります。

ただし、激しい雨の中や浸水が始まってから、無理に地下へ入ったり、止水板を設置しに行ったりしてはいけません。人命の安全を優先し、事前に決めた手順も現場の危険に応じて中止・変更します。

浸水したときは、電気に触れる前に安全を確保する

電気室やコンセントの近くまで水が来ている場合、関係者が水の中に入って機器を動かしたり、濡れた分電盤を操作したりすることは危険です。まず人を安全な場所へ移し、必要に応じて建物の管理者などに状況を伝え、電気の専門家の指示を受けましょう。安全に実施できる範囲で使用中の機器を停止し、危険な場所には人が立ち入らないようにします。

被害の状況は、可能であれば安全な場所から記録します。どの階・区画に水が入り、どの機器が濡れた可能性があるかを整理しておくと、復旧時に専門家へ伝えやすくなります。テナントや居住者から「雨漏りでコンセントが濡れた」「焦げたにおいがする」と連絡があった場合も、単なる内装の修理依頼として処理せず、電気設備への影響を確認する必要があります。発煙や発火を確認したら、速やかに119番通報し、周囲の人を避難させてください。

雨がやんだ後こそ、再使用を急がない

床の水が引き、停電が解消したとしても、それだけで建物内のすべての機器が安全になったとは限りません。浸水した電気製品は、そのまま使用を再開せず、メーカーや販売店に点検・修理について相談します。水がかかった配線器具や分電盤、受変電設備についても、管理者の判断だけで通電せず、電気の専門家に確認を依頼することが重要です。

特に複数のテナントが入る建物では、共用部分と各テナントの室内で被害状況が異なることがあります。「建物に電気が戻ったので、すべての機器を使ってよい」と一律に案内するのではなく、浸水した区画と使用を控える機器を具体的に伝えましょう。外観に異常が見えない場合でも、焦げたにおい、異音、機器のエラー表示などがあれば使用を中止し、専門家に相談します。

復旧時の連絡では、「共用部分の電気は使用可能」「地下の一部区画は立入りを控える」「水がかかったテナント所有の機器は各自で使用せず、点検について相談する」など、確認できた範囲と未確認の範囲を分けて伝えると混乱を抑えられます。停電が長引く場合も、いつ復旧するかを根拠なく約束せず、次の案内予定と問い合わせ先を明示しておくことが重要です。

国のガイドラインでは、浸水した受変電設備の復旧にあたり、所有者・管理者が電気主任技術者などへ連絡し、分電盤や制御盤を含めた被害状況を把握したうえで、復旧手順を関係者と協議する流れが示されています。排水作業についても、作業前に電気設備関係者が安全を確認することが前提です。建物の運用再開を急ぐときほど、この順番を守る必要があります。

防火管理の視点から確認しておきたいこと

大雨への備えを建物全体の防火管理につなげるには、電気設備だけでなく、火災が起きた場合に人が安全に行動できる状態も確認しておきたいところです。浸水や停電が自動火災報知設備、非常照明、避難経路などに影響していないか、管理会社や設備点検業者と情報を共有します。設備に異常があれば、原因と復旧の見通しを確認し、必要な対応について管轄消防署にも相談しましょう。

防火管理者が電気設備の修理や通電の可否を一人で判断する必要はありません。大切なのは、雨漏りや浸水の情報を見落とさず、建物の所有者・管理者、テナント等で共有することです。例えば、日頃から次の項目を確認しておくと、いざというときの連絡が円滑になります。

  • 浸水が想定される場所と、そこにある電気設備の位置
  • 雨漏りの履歴と、水が電気器具に届く可能性がある場所
  • 止水板などの設置担当者と、設備業者等への連絡方法
  • 浸水後に使用を控える区画・機器を、テナントや居住者へ伝える方法
  • 消防用設備や避難経路に影響が出た場合の確認先

大雨そのものが火災を起こすわけではありません。しかし、建物に入った水と電気が関わると、雨がやんだ後に危険が表面化することがあります。気象情報を見て備え、浸水時には人の安全を優先し、復旧時には専門家と確認してから設備を使う。この一連の対応を、建物の防火管理にも取り入れておくと安心です。

《参考資料》

気象庁「エルニーニョ監視速報(2026年9月9日・第408号)」:https://ds.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/houdou/pdf/elnino202609.pdf

気象庁「エルニーニョ現象発生時の日本の天候の特徴」:https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/tenkou/nihon1.html

気象庁「令和8年夏を対象とした異常気象分析検討会の結果について」:https://www.jma.go.jp/jma/press/2609/01c/kentoukai20260901.html

製品評価技術基盤機構「浸水した家電製品から発火」:https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/sonota/2021082601.html

製品評価技術基盤機構「地震発生時や復旧時の製品事故」:https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/mailmagazin/2026fy/vol508_260908.html

国土交通省・経済産業省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001349327.pdf

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