防火管理者のこづっきです。
当社の主力事業は、防火管理者の外部委託サービスです。本サービスは、防火管理者に求められる業務をワンパッケージ化したもので、その業務の一つに「巡回防火点検」があります。
この巡回防火点検は、防火管理業務の一環として建物の防火上の問題を確認するために実施するものですが、お客様の中には、法令に基づく「消防設備点検」と混同されている方が時折いらっしゃいます。
私自身、消防設備士乙種第6類の資格を保有していますが、正直なところ、この資格だけで対応できる業務の範囲は限られており、社会に貢献できることも決して多くはないと感じています。
一方で、将来的な当社のサービス拡充を考えるうえで、消防設備点検業務は非常に興味深い分野です。今回、私自身もこの分野についてさらに知識を深めていきたいと考えるようになりました。
そこで今回は、当社が実施している巡回防火点検との違いも踏まえながら、消防設備点検の基本的な仕組みや、点検が必要となる建物の条件、点検を行う資格者の要件について解説したいと思います。
消防設備点検とは?対象建物の条件や資格者の要件をわかりやすく解説
消防設備点検とは、建物に設置されている消防用設備等が、火災の際に正常に機能する状態にあるかを定期的に確認することです。
正式には「消防用設備等点検」といい、消防法第17条の3の3により、一定の防火対象物の関係者に対して、消防用設備等の定期的な点検と、その結果の消防機関への報告が義務付けられています。
対象となる消防用設備等には、例えば次のようなものがあります。
- 消火設備:消火器、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備など
- 警報設備:自動火災報知設備、非常警報設備など
- 避難設備:避難器具、誘導灯、誘導標識など
- 消防活動上必要な施設:連結送水管、非常コンセント設備など
建物の用途や規模、構造によって、設置が必要となる消防用設備等は異なります。
例えば、比較的小規模な建物では消火器などが中心となることもありますが、大規模な商業施設や高層建築物などでは、スプリンクラー設備や連結送水管といった設備が設置されている場合もあります。
消防用設備等は日常的に使用する機会が少ないものも多く、故障や不具合が発生していても、火災などの緊急時まで気付かない可能性があります。定期的な点検は、こうした問題を早期に発見し、必要な修理や整備につなげるための重要な制度です。
消防設備点検には2つの種類がある
消防設備点検には「機器点検」と「総合点検」の2種類があり、基本的な実施周期は次のとおりです。
①機器点検(6か月に1回)
消防用設備等の外観や設置状況、簡易な操作による機能確認などを行う点検です。例えば、消火器が所定の位置に設置されているか、外観に損傷や腐食がないか、警報設備が正常な状態にあるかなどを確認します。
②総合点検(1年に1回)
消防用設備等の全部または一部を実際に作動させるなどして、設備の総合的な機能を確認する点検です。例えば、自動火災報知設備やスプリンクラー設備などについて、所定の方法で作動状況を確認し、必要な性能が維持されているかを調べます。
ただし、すべての消防用設備等に機器点検と総合点検の両方が必要というわけではありません。消火器や誘導灯など、機器点検のみが規定されている設備もあります。
具体的な点検内容や実施周期は、消防用設備等の種類によって異なり、消防庁の告示で定められています。
消防設備点検と消防署への報告は別のもの
消防設備点検で特に注意したいのが、点検の実施周期と消防署への報告周期が異なることです。機器点検は6か月に1回、総合点検は1年に1回を基本として実施しますが、その結果を消防署へ報告する周期は建物の用途によって異なります。
- 特定防火対象物:1年に1回報告
- 非特定防火対象物:3年に1回報告
特定防火対象物とは、飲食店、物品販売店舗、ホテル、病院など、不特定多数の人や災害時に援護が必要な人が利用する施設などを指します。一方、非特定防火対象物には、一般的な事務所、共同住宅、学校、工場などが含まれます。
例えば、一般的な共同住宅では消防署への報告が3年に1回となりますが、消防設備点検そのものを3年に1回にしてよいわけではありません。この違いを正しく理解しておくことが重要です。
なお、東京消防庁のホームページでも、消防設備点検が必要となる建物や点検周期、消防署への報告周期などについて詳しく説明されていますので、参考にしてください。
《参考》東京消防庁「消防用設備等点検報告制度」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/tenken_houkoku.html
消防設備点検が必要となる建物の条件とは?
消防設備点検が必要となるかどうかは、基本的に建物の用途や規模、構造、設置されている消防用設備等によって判断されます。消防法令に基づいて消火器や自動火災報知設備などが設置されている防火対象物では、原則として定期的な消防設備点検と報告が必要となります。
ここで重要なのは、消防設備点検の義務が大規模な建物だけに限られるものではないという点です。
①共同住宅(マンション)
共同住宅では、建物の規模などに応じて消火器、自動火災報知設備、避難器具などが設置されています。これらが法令に基づいて設置されている場合、消防設備点検の対象となります。
消防署への報告周期は、一般的な共同住宅の場合、3年に1回です。ただし、建物の規模や用途の構成によって、必要な設備や管理方法が異なる場合があります。
②オフィスビル
オフィスビルでも、消火器や自動火災報知設備、誘導灯などの消防用設備等が設置されている場合には、定期的な点検が必要です。
一般的な事務所は非特定防火対象物に分類されるため、消防署への報告は原則として3年に1回です。ただし、ビル内に飲食店や物品販売店舗などが入居している場合、建物全体が特定用途を含む複合用途防火対象物として扱われ、報告周期などが変わることがあります。
③商業施設(飲食店・物品販売店舗等)
飲食店や物品販売店舗が入居する建物は、不特定多数の人が利用する施設です。こうした用途の建物では、火災発生時に多数の利用者が影響を受ける可能性があることから、消防法令上も重要な管理対象となっています。
消防用設備等の点検が必要となる場合、消防署への報告は原則として1年に1回です。また、建物の規模が比較的小さくても、消火器などの設備が必要となり、点検義務が生じる場合があります。
④宿泊施設(ホテル・旅館等)
ホテルや旅館などの宿泊施設も、特定防火対象物に該当します。
宿泊者は建物の構造や避難経路を十分に把握していないことも多く、火災発生時には警報設備や避難設備が正常に機能することが重要です。そのため、建物の規模や構造に応じた消防用設備等の設置・維持管理が求められ、消防署への報告周期も原則として1年に1回となっています。
小規模な建物でも点検が必要な場合がある
消防設備点検について、「延べ面積1,000㎡以上の建物だけが対象」と誤解されることがあります。しかし、この1,000㎡という基準は、主に有資格者による点検が必要となる建物を判断する際の基準であり、消防設備点検そのものが必要となるかどうかを一律に決めるものではありません。
例えば、延べ面積が1,000㎡未満の小規模な飲食店や事務所でも、消防法令に基づき消火器などが設置されていれば、原則として点検が必要です。つまり、「消防設備点検を行う義務」と「有資格者に点検を依頼する義務」は分けて考える必要があります。
なお、消防法施行令には点検対象から除外される防火対象物についての規定もあるため、実際の該当性は法令上の用途区分などに基づいて判断します。
消防設備点検の義務を負うのは誰?
消防設備点検の実施や報告については、建物の所有者、管理者、占有者などの関係者が法令上の義務を負います。一般的には、消防用設備等の維持管理について権限を有する者が、点検の手配や消防署への報告を行います。
管理会社や点検業者に業務を委託している場合でも、建物の関係者が法令上の責任を負うことに変わりはありません。
消防設備点検を実施するための資格者要件とは?
消防設備点検は、必ずしもすべての建物で有資格者が実施しなければならないわけではありません。消防法令では、建物の用途や規模、構造、設置設備などによって、消防設備士または消防設備点検資格者による点検が必要となる条件を定めています。
一方、有資格者による点検が義務付けられていない建物であっても、消防用設備等の点検には専門的な知識や技術、専用の点検器具などが必要となる場合があります。そのため、実際には建物の所有者や管理者が自ら点検を行うことは容易ではなく、専門の点検業者に依頼するケースが一般的です。

有資格者による点検が必要となる建物
代表的な条件は次のとおりです。
①延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物
飲食店、物品販売店舗、ホテル、病院などの特定防火対象物で、延べ面積が1,000㎡以上の場合は、有資格者による点検が必要です。
なお、延べ面積1,000㎡とは約302坪の広さで、一般的なコンビニエンスストア約6~7店舗分に相当します。延べ面積とは建物の各階の床面積を合計したもので、例えば1フロア250㎡の4階建て建物であれば、延べ面積は1,000㎡となります。
②延べ面積1,000㎡以上の非特定防火対象物で、消防長または消防署長が指定するもの
一般的な事務所や共同住宅などの非特定防火対象物については、延べ面積が1,000㎡以上で、消防長または消防署長が火災予防上必要と認めて指定した場合、有資格者による点検が必要です。
指定の状況は地域によって異なるため、具体的な判断は管轄消防署への確認が必要です。
③避難に利用できる階段が限られる一定の防火対象物
地下階や3階以上の階など、避難階以外の一定の階に飲食店や店舗などの特定用途があり、その階から避難階または地上に直通する階段が2つ以上設けられていない建物などが該当します。ただし、屋外階段や避難上有効な構造を有する階段などについては例外があるため、具体的な該当性は建物の構造や用途を踏まえて判断する必要があります。
こうした建物の危険性を示す代表的な事例が、2001年9月1日に発生し、44名もの犠牲者を出した歌舞伎町ビル火災です。
火災が発生した建物は、地下2階・地上4階建て、延べ面積約500㎡の小規模な雑居ビルで、3階には麻雀店、4階には飲食店が入居していました。しかし、避難に利用できる屋内の直通階段は1つしかなく、その階段部分で火災が発生したため、多くの人が避難経路を失う結果となりました。
この火災を教訓として、その後、消防法令の改正による防火安全対策の強化が進められました。現在では、こうした階段が1つしかない一定の建物について、規模が小さくても有資格者による消防設備点検が義務付けられています。

④全域放出方式の二酸化炭素消火設備が設置されている建物
全域放出方式の二酸化炭素消火設備が設置されている建物についても、有資格者による点検が必要です。二酸化炭素消火設備は、放出された二酸化炭素によって重大な人的事故が発生する危険性があるため、安全管理には特に注意が必要です。
具体的には、ビルの地下にある機械式駐車場や電気室、通信機器室などで使用される設備です。火災が発生した際、室内に大量の二酸化炭素を放出し、酸素濃度を低下させることで消火します。水を使用しないため、電気設備などへの水損を防げるというメリットがあります。
一方で、二酸化炭素が放出された場所に人がいると、短時間で意識を失い、死亡する危険性もあります。実際に、過去には駐車場での工事中などに二酸化炭素が誤って放出され、作業員が死亡する事故が相次いで発生しました。
こうした事故を受け、令和5年4月1日からは、全域放出方式の二酸化炭素消火設備が設置されている建物について、延べ面積にかかわらず、有資格者による消防設備点検が義務付けられています。
なお、総務省消防庁では、消防設備点検の実施周期や、有資格者による点検が必要となる建物の条件などをまとめた資料を公開しています。具体的な点検のルールを確認する際の参考になります。
《参考》総務省消防庁「消防用設備等には定期点検が必要です。」(PDF)
https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/items/prevention001_19_hutekisetsu_leaflet.pdf
消防設備士とは?
消防設備士は、消防用設備等の工事、整備、点検に関する国家資格です。資格には甲種と乙種があり、さらに取り扱う消防用設備等の種類に応じて区分されています。
甲種消防設備士は、取得した類に対応する設備について、工事・整備・点検を行うことができます。一方、乙種消防設備士は、取得した類に対応する設備について、整備・点検を行うことができますが、甲種に認められる工事は行えません。
例えば、消火器については第6類、自動火災報知設備については第4類など、設備ごとに対応する資格区分が定められています。そのため、消防設備士の資格を持っていれば、あらゆる消防用設備等を点検できるというわけではありません。
消防設備点検資格者とは?
消防設備点検資格者は、消防用設備等の点検を実施するための専門資格です。
消防設備点検資格者には、以下のとおり、第1種、第2種、特種の3つの区分があります。
- 第1種消防設備点検資格者:主に消火器、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備など、機械系統の消防用設備等の点検
- 第2種消防設備点検資格者:主に自動火災報知設備、誘導灯、避難器具など、電気系統を含む消防用設備等の点検
- 特種消防設備点検資格者:特殊消防用設備等の点検
消防設備点検資格者は、所定の受講資格を満たした人が講習を受講し、修了考査に合格したうえで、免状の交付を受けることで取得できる資格です。また、資格取得後は5年ごとに再講習を受講することが義務付けられています。
なお、私が保有している消防設備士乙種第6類も受講資格の一つとして認められており、この資格を足掛かりに消防設備点検資格者の取得を目指すこともできます。
消防設備士との大きな違いは、消防設備点検資格者の資格だけでは、消防設備士の資格を必要とする工事や整備を行うことができない点です。点検の依頼先を選ぶ際には、建物に設置されている消防用設備等に対応した資格を持っているか確認することが大切です。
無資格者でも消防設備点検はできる?
有資格者による点検が義務付けられていない建物では、消防設備士や消防設備点検資格者以外の人が点検を行うことも、法令上は認められています。例えば、比較的小規模な建物で消火器などの設備が設置されている場合、建物の所有者や管理者が自ら点検を行うことも可能です。
総務省消防庁では、一部の消防用設備等について、自ら点検・報告を行うための資料や支援アプリを公開しています。ただし、無資格者による点検が認められているからといって、点検内容を省略してよいわけではありません。
消防用設備等には専門的な知識や点検器具が必要なものも多く、誤った点検によって不具合を見落とす可能性があります。そのため、法令上は無資格者でも点検できる建物であっても、専門の資格者や点検業者へ依頼することが望ましい場合があります。
なお、総務省消防庁が公開している「消防用設備等点検アプリ」では、消火器や非常警報器具など、一部の設備について点検方法を確認しながら報告書を作成することができます。自ら点検を実施する場合の参考資料として活用できます。
《参考》総務省消防庁「消防用設備等点検アプリ」
https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/suisin/post23.html
消防設備点検と防火管理者の役割の違い
消防設備点検と混同されやすいのが、防火管理者の業務です。
防火管理者は、消防計画の作成や消防訓練の実施、避難施設の維持管理など、建物全体の防火管理に関する業務を担当する立場です。消防用設備等の点検・整備についても、その実施状況を確認し、必要な対応につなげることが防火管理上の重要な業務となります。
ただし、防火管理者の資格を持っていることと、消防設備士や消防設備点検資格者の資格を持っていることは別です。防火管理者に選任されたからといって、有資格者による点検が義務付けられた建物の消防設備点検を、自ら実施できるわけではありません。
例えば、消防設備点検は専門の点検業者が実施し、防火管理者は点検結果の把握や不備事項の改善状況を確認するという役割分担が考えられます。
特に重要なのは、点検で不備が発見された際の対応です。
消防設備点検は、単に報告書を作成して消防署に提出すれば終わりというものではありません。設備の故障や不具合が確認された場合には、建物の所有者や管理権原者などが必要な修理・整備を進め、消防用設備等を適切な状態に維持することが求められます。
防火管理者も、点検結果や不備事項を把握し、管理権原者と連携して改善につなげることが重要です。
まとめ|消防設備点検は建物の安全を維持するための重要な制度
消防設備点検は、建物に設置された消防用設備等が、火災の際に正常に機能する状態にあるかを確認するための制度です。
点検は機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回を基本とし、消防署への報告は建物の用途に応じて原則1年または3年に1回行います。また、消防設備点検の義務は大規模な建物だけに限られるものではありません。小規模な店舗や事務所、共同住宅でも、消防法令に基づいて消防用設備等が設置されている場合には、原則として点検が必要です。
一方、有資格者による点検が必要かどうかは、建物の用途や延べ面積、構造、設置設備などによって異なります。建物所有者や管理会社は、消防設備点検の対象となる設備、点検周期、報告期限、資格者の要件を正しく把握し、適切に管理することが重要です。
さらに、防火管理者は消防設備点検の実施状況や点検結果を把握し、不備が確認された場合には関係者と連携して改善を進める必要があります。消防設備点検を単なる法令上の手続きとして捉えるのではなく、建物の利用者や入居者の安全を守るための重要な取り組みとして、継続的に実施していくことが大切です。







