防火管理不備の放置は厳禁|消防法上のリスクを解説
建物やテナントの防火管理について、「防火管理者を選任していない場合、罰則はあるのか」「防火管理業務をきちんと行っていない場合、どのような責任があるのか」といったご相談をいただくことがあります。
結論からいうと、防火管理者を選任すべき建物であるにもかかわらず適切な体制が整っていない場合や、消防署からの命令に従わなかった場合などには、消防法に基づく罰則が科される可能性があります。
防火管理は、単に防火管理者を選任して終わりではありません。消防計画の作成、消防訓練の実施、避難経路や消防用設備等の確認、火気管理など、日常的かつ継続的な管理が求められます。
ここでは、防火管理者を選任しない場合や、防火管理業務を怠った場合に考えられる主な罰則、管理権原者が注意すべきポイントについて解説します。
防火管理者を選任しない場合の罰則
一定の条件に該当する建物や事業所では、防火管理者を選任する必要があります。
防火管理者を選任すべき建物であるにもかかわらず、防火管理者が選任されていない場合、消防署から防火管理者を定めるよう命令を受けることがあります。この命令に従わなかった場合には、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、防火管理者を選任または解任したにもかかわらず、所轄消防署への届出を怠った場合には、30万円以下の罰金または拘留の対象となる可能性があります。
ここで注意したいのは、「資格を持っている人がいる」だけでは足りないという点です。防火管理者として正式に選任し、消防署へ必要な届出を行い、実際に防火管理業務を行う体制が整っていなければ、適切な防火管理体制とはいえません。
人事異動や退職によって、防火管理者として選任されていた従業員がその建物から離れることもあります。その場合には、後任者の選任や届出が必要になるため、担当者任せにせず、管理権原者側で継続的に確認することが重要です。
防火管理業務を怠った場合の罰則
防火管理者を選任していたとしても、防火管理業務が適正に行われていなければ問題になる可能性があります。
防火管理者には、消防計画の作成、消防訓練の実施、避難経路の管理、消防用設備等の確認、火気管理など、建物の防火安全を維持するための役割があります。
たとえば、共用部や避難経路に物品が放置されている、消防訓練が実施されていない、消防署からの指摘に対応していないといった状態が続けば、防火管理業務が適正に行われていないと判断される可能性があります。
具体的には、消防署から防火管理業務の適正な実施に関する命令を受けたにもかかわらず、その命令に従わなかった場合には、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
つまり、防火管理者を選任しているだけでは十分ではありません。実際に防火管理業務が継続的に行われているかどうかが重要です。
消防署の立入検査を拒否した場合の罰則
消防署は、必要に応じて建物への立入検査を行い、防火管理の状況や消防用設備等の維持管理状況を確認します。
立入検査で指摘を受けた場合には、指摘内容を確認し、必要な改善対応を進める必要があります。また、消防署から資料の提出を求められることもあります。
立入検査を拒否した場合や、資料提出命令に従わなかった場合には、30万円以下の罰金または拘留の対象となる可能性があります。
消防署からの指摘や確認は、単なる形式的なやりとりではありません。建物の防火安全に関わる重要な確認であり、適切に対応しなければ、追加の指導や命令につながることもあります。
そのため、立入検査を受けた場合には、指摘事項を放置せず、改善内容や対応状況を記録しながら進めることが重要です。
改修命令・使用禁止命令に従わない場合の罰則
防火管理上の問題が重大である場合や、火災予防上危険な状態が放置されている場合には、消防署から改修、移転、除去などの措置命令が出されることがあります。
防火対象物に対する改修・移転・除去等の措置命令に従わなかった場合には、2年以下の拘禁刑や200万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、特に危険性が高い場合には、防火対象物の使用禁止・使用停止・使用制限などの命令が出されることもあります。このような命令に従わなかった場合には、3年以下の拘禁刑や300万円以下の罰金が科される可能性があります。
さらに、火災予防や消防活動の支障となる物件の除去等について命令を受けたにもかかわらず従わなかった場合には、1年以下の拘禁刑や100万円以下の罰金が科される可能性があります。
これらは、単なる事務手続きの問題ではなく、建物の安全性に関わる重大な違反として扱われる可能性があります。

防火管理の不備は管理権原者のリスクにもつながる
防火管理上の最終責任者は、建物オーナーや事業主などの管理権原者です。
防火管理者を選任している場合でも、管理権原者の責任そのものがなくなるわけではありません。管理権原者には、防火管理者が必要な業務を適切に行える体制を整え、その実施状況を継続的に確認することが求められます。
防火管理を怠った状態で火災事故が発生した場合、消防法上の罰則だけでなく、損害賠償や信用低下など、さまざまなリスクにつながる可能性があります。事案によっては、刑事責任が問われることもあります。
そのため、管理権原者は、防火管理者を選任して終わりではなく、消防計画の作成・見直し、消防訓練の実施、日常点検、記録管理、消防署への届出・査察対応などが継続的に行われているかを確認する必要があります。
これは、防火管理者の外部委託を利用する場合も同様です。外部委託をしているからといって、管理権原者が無条件に安心できるわけではありません。サービス内容によっては、防火管理者としての選任や届出を中心とし、日常点検、消防訓練、記録管理、消防署対応などの実務が十分に含まれていない場合もあります。
そのような場合、火災事故や消防署からの指摘が発生した際に、管理権原者の責任を免れられるとは限りません。だからこそ、防火管理者の外部委託を検討する際には、料金の安さだけで判断するのではなく、実際にどこまでの業務を継続的に対応してくれるのかを確認することが重要です。
防火管理業務の罰則と注意点
防火管理業務を怠った場合、消防法上の罰則が科される可能性があります。消防法上の命令違反や罰則については、一般財団法人日本消防設備安全センターが「消防法の命令違反概要・罰則規定一覧」として整理しています。
本記事では、この資料も参考にしながら、防火管理業務に関係する主な罰則を紹介しました。
・防火管理者を定めるよう命令を受けたにもかかわらず従わなかった場合
6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
・防火管理者の選任・解任の届出を怠った場合
30万円以下の罰金または拘留
・防火管理業務の適正な実施に関する命令に従わなかった場合
1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
・立入検査を拒否した場合や、資料提出命令に従わなかった場合
30万円以下の罰金または拘留
・改修命令や使用禁止命令などに従わなかった場合
内容によっては、より重い罰則が科される可能性があります。
《参考》一般財団法人日本消防設備安全センター:「消防法の命令違反概要・罰則規定一覧」
https://www.fesc.or.jp/ihanzesei/data/pdf/batsukitei.pdf
ただし、防火管理で本当に重要なのは、罰則を避けることだけではありません。日常的な防火管理を継続し、火災を予防するとともに、万が一火災が発生した場合の被害を最小限に抑える体制を整えることです。
防火管理者を選任して終わりではなく、消防計画の作成、消防訓練、避難経路や消防用設備等の確認、記録の管理などを継続的に行い、必要な防火管理体制を維持することが重要です。
防火管理に不安がある場合や、消防署から指摘を受けて対応に困っている場合は、早めに専門家へ相談し、適切な管理体制を整えることをおすすめします。当社では、防火管理者の外部委託をはじめ、消防計画の作成、消防訓練、日常点検、消防署対応まで、実務に即した防火管理体制づくりをサポートしています。









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