電気火災は身近な場所で起こる|日常点検と防火管理で逃げ遅れを防ぐために
火災というと、コンロの火、たばこ、ストーブなど、目に見える「火」が原因になるものを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし近年、私たちの身近な生活空間では、電気器具類を発火源とする火災が増えています。
総務省消防庁の「住宅における電気火災に注意」では、近年の住宅火災の傾向として、電気器具類を発火源とする住宅火災の件数が増加していることが示されています。また、同資料では、令和3年に住宅火災における発火源別火災件数で「電気器具類」が第1位となったことも紹介されています。
出典:総務省消防庁「住宅における電気火災に注意」
https://www.fdma.go.jp/relocation/html/life/yobou_contents/materials/#movie
なお、この資料は住宅火災を対象としたものですが、コンセント、延長コード、モバイルバッテリー、電子レンジ、エアコンなどは、住宅だけでなく、事務所、店舗、宿泊施設、診療所、福祉施設などでも日常的に使用されています。そのため、電気火災の注意点は、住宅に限らず、多くの建物で参考になります。
電気火災の怖いところは、火を使っている意識がない場所でも起こり得る点です。電気製品は日常生活や業務の中で当たり前に使われているため、火災の原因になるという意識が薄くなりがちです。しかし、使用方法や維持管理を誤れば、身近な電気製品が火災の原因となることがあります。
充電式電池・リチウム電池による火災
近年、特に注意が必要なのが、モバイルバッテリーなどに使われる充電式電池やリチウム電池です。
スマートフォン、タブレット、ノートパソコン、携帯扇風機、充電式掃除機など、充電式の製品は生活や業務に欠かせないものになっています。その一方で、使い方や保管方法を誤ると、火災につながるおそれがあります。
たとえば、リチウム電池を処分する際に適切な処理をしないと、電池同士が接触し、放電によって発火する場合があります。廃棄時に電池を取り出そうとして無理に分解することも危険です。不要になった充電式電池やリチウム電池は、自治体のルールに従い、適切に処分する必要があります。
また、充電式電池を暖房機器の近くに置くなどして暖めると、内部に熱がこもり、電池を損傷させて発火することがあります。冬場にストーブやヒーターの近くへモバイルバッテリーを置いてしまうことは、日常的に起こり得るため注意が必要です。
水没にも注意が必要です。洗面所などで水に落としてしまった場合、内部に水が入り込み、異常が生じることがあります。その後、通電時などに内部でショートして発火する可能性があります。
さらに、落下などにより大きな衝撃が加わった場合も危険です。外見上は大きな損傷がなくても、内部が変形したり、電池内部が損傷したりしている場合があります。膨らみ、異常な発熱、異臭、充電不良などがある場合は、そのまま使用を続けるべきではありません。
小さな電池やモバイルバッテリーであっても、扱いを誤れば火災の原因になります。説明書を確認し、正しい方法で使用するとともに、異常を感じた場合は使用を中止することが大切です。
また、購入時にはPSEマークが表示されているかなど、安全性にも注意する必要があります。価格の安さだけで選ぶのではなく、一定の安全性が確認できる製品を選ぶことも、火災予防の一つです。
家電製品の使い方にも注意が必要
電気火災は、充電式電池だけでなく、身近な家電製品からも発生します。
たとえば、電子レンジで食品を加熱しすぎると、水分が蒸発して炭化し、発火することがあります。近年は、電子レンジを使った簡単な調理方法が多く紹介されていますが、加熱時間が長すぎたり、食品の状態によっては火災につながる可能性があります。
また、アルミなどの金属が使われた容器や袋を電子レンジで加熱すると、スパークを起こし、発火する場合があります。電子レンジで使用できる容器かどうかを確認することは、基本的なことですが非常に重要です。
電子レンジ内の油汚れにも注意が必要です。庫内の清掃を怠り、油汚れなどを放置していると、汚れが炭化し、急に発火する場合があります。日常的に使う家電ほど、汚れや劣化を見落としやすくなります。こまめな清掃は、衛生面だけでなく火災予防の面でも大切です。
エアコンについても注意が必要です。清掃中に洗浄液を誤って電気配線にかけてしまい、拭き取ることなく稼働させると、配線がショートして発火する場合があります。エアコンを清掃する際は、洗浄液が電気配線にかからないよう注意し、不安がある場合は無理に作業せず、専門業者への依頼も検討するとよいでしょう。
家電製品は、正しく使用していれば便利なものですが、使用方法を誤ると火災につながります。長時間の加熱に気をつける、金属製のものを電子レンジに入れない、こまめに清掃するなど、基本的な管理を徹底することが重要です。
プラグ・コード類は見落とされやすい危険箇所
多くの電化製品に共通する危険箇所が、プラグやコード類です。
コードを強く折り曲げた状態で使用すると、内部の配線が部分的に断線し、その部分が発熱して発火する場合があります。家具の下敷きになったコード、ドアに挟まれたコード、何度も曲げ伸ばしされているコードなどは、特に注意が必要です。
プラグが完全に差し込まれていない状態で使用することも危険です。差し込み不足のまま使用すると、電気抵抗が増え、プラグが加熱されます。この状態が続くと、急に発火する場合があります。コンセントに差しているから問題ないと思い込まず、差し込みが緩くなっていないか、ぐらつきがないかを確認することが大切です。
また、プラグを長期間差し込んだままにしておくと、ほこりや湿気により火花放電を繰り返し、やがて火災に至ることがあります。これはトラッキング火災と呼ばれるものです。冷蔵庫、テレビ、電子レンジ、コピー機、パソコン周辺機器など、長期間プラグを抜かない機器では特に注意が必要です。
事務所や店舗では、机の下、棚の裏、カウンター周辺、バックヤードなどに電源タップが置かれていることが多くあります。普段見えない場所にあるため、ほこりがたまっていても気づきにくく、コードが踏まれていたり、束ねられていたりしても放置されがちです。
たこ足配線にも注意が必要です。延長コードや電源タップに多くの機器を接続すると、定格電流を超える電流が流れ込み、発熱して発火する場合があります。とりあえず使えるから大丈夫ではなく、接続している機器の数や消費電力を確認し、無理な使用を避けることが必要です。
コードを束ねたまま使用することも危険です。束ねた部分に熱がこもり、発火する場合があります。見た目をすっきりさせるためにコードをまとめているつもりでも、使用中のコードを強く束ねることは火災リスクになります。
プラグやコード類は、家具の裏や机の下など、普段目につきにくい場所にあることが多いものです。だからこそ、日頃から意識して確認し、異常を見つけることが火災予防につながります。

電気火災は「気づきにくい」からこそ怖い
電気火災が怖いのは、出火の前兆に気づきにくいことです。
コンロであれば火が見えます。ストーブであれば熱を感じます。しかし、電気火災の場合、家具の裏、壁際、機器内部、コードの内部など、見えにくい場所で異常が進むことがあります。
また、夜間や無人時間帯に発生した場合、初期対応が遅れる可能性があります。住宅であれば就寝中、店舗や事務所であれば営業時間外、宿泊施設であれば利用者が眠っている時間帯に火災が発生することも考えられます。
火災は、出火直後であれば小さな火でも、煙が広がると状況は一気に危険になります。煙で視界が悪くなり、避難経路が分からなくなることがあります。煙を吸い込むことで判断力や行動力が低下し、逃げ遅れにつながるおそれもあります。
特に、不特定多数の人が利用する建物では、利用者が非常口や階段の場所を把握していないことが一般的です。飲食店、物販店舗、宿泊施設、診療所、福祉施設などでは、建物の管理者や従業員が日頃から避難経路を確認し、火災時に適切に誘導できる体制を整えておく必要があります。
電気火災は、家具の裏や機器内部など、見えにくい場所から発生することがあります。発見が遅れれば、火や煙が広がり、避難が難しくなるおそれがあります。特に、就寝中や無人時間帯、不特定多数の人が利用している時間帯に発生した場合、初期対応の遅れが逃げ遅れにつながる可能性があります。
普段からできる火災予防対策
電気火災を防ぐために、まず大切なのは日常的な確認です。
コンセントや電源タップにほこりがたまっていないか。プラグがしっかり差し込まれているか。コードが折れ曲がったり、踏まれたり、家具の下敷きになったりしていないか。延長コードをたこ足配線にしていないか。コードを束ねたまま使用していないか。これらは専門的な機器がなくても確認できます。
充電式電池やモバイルバッテリーについては、説明書を確認し、正しい方法で使用することが基本です。強い衝撃を与えたもの、水に濡れたもの、膨らみや異常発熱があるものは使用を中止し、自治体のルールに従って適切に処分しましょう。
家電製品については、使用方法を守ることが重要です。電子レンジでは長時間の加熱を避け、金属製の容器やアルミ包装を入れないようにしましょう。庫内の油汚れも放置せず、こまめに清掃することが火災予防につながります。
事務所や店舗では、個人任せにせず、定期的に確認する仕組みを作ることが効果的です。たとえば、月に1回、コンセントまわりや電源タップを確認する。年末や年度末に不要な配線を整理する。新しい電気機器を導入した際に、電源容量や配線状況を確認する。こうした小さな積み重ねが、火災リスクを下げることにつながります。
また、従業員が複数いる建物では、誰かが気づいたときだけ対応するのではなく、点検項目として定期的に確認することが重要です。電源タップの周辺、コピー機やパソコン周辺、厨房機器まわり、バックヤード、倉庫、休憩室など、電気製品が集中する場所は、特に注意して確認しましょう。
防火管理は日常の積み重ねである
火災予防というと、消防用設備の点検や消防訓練など、決められた対応を思い浮かべる方も多いかもしれません。もちろん、消防用設備の点検、防火管理者の選任、消防計画の作成、消防訓練の実施はいずれも重要です。
しかし、それだけで十分とはいえません。実際の火災予防は、日常の管理の積み重ねです。
避難経路に物を置かない。非常口をふさがない。消火器の前に障害物を置かない。防火戸の閉鎖を妨げない。電源コードやコンセントの状態を確認する。従業員が火災時の役割を理解している。こうした基本的な管理ができていてこそ、万が一の際に被害を抑えることができます。
電気火災は、モバイルバッテリー、電子レンジ、エアコン、延長コード、電源タップ、コンセントなど、日常的に使っているものから発生することがあります。特に、プラグやコード類は家具の裏や机の下など、普段見えにくい場所にあることが多く、異常に気づきにくい箇所です。
そして、発見が遅れれば、火や煙が広がり、避難が難しくなるおそれがあります。煙で視界が悪くなれば、避難経路が分からなくなったり、判断や行動が遅れたりする可能性もあります。利用者、従業員、入居者の安全を守るためには、日頃から電気火災のリスクを意識し、適切な使用と維持管理に努めることが大切です。
建物の用途や規模にかかわらず、火災予防の基本は日常管理です。消防用設備が設置されていても、避難経路がふさがれていたり、従業員が火災時の行動を理解していなかったりすれば、いざという時に十分な対応ができません。
防火管理は、特別な日だけ行うものではありません。日常の確認、整理整頓、正しい使用方法の徹底、避難経路の確保、そして万が一に備えた訓練の積み重ねです。
身近な電気製品だからこそ、油断せず、普段から確認する。その小さな意識が、火災を防ぎ、逃げ遅れを防ぎ、大切な命を守ることにつながります。









