家庭の火災が増加中|住宅用消火器を備えていますか

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防火管理者のこづっきです。

火災というと、工場や飲食店、大規模な建物などで起きるものを想像する方もいるかもしれません。しかし、実際には、私たちが日常生活を送る住宅でも多くの火災が発生しています。

東京消防庁が令和8年1月に公表した速報資料によると、令和7年中に東京消防庁管内で発生した火災は5,269件となり、過去10年間で最多となりました。前年と比較すると751件、率にして16.6%増加しています。

そのうち住宅火災は1,982件に上り、こちらも過去10年間で最多となりました。令和2年以降、住宅火災は増加傾向にあり、家庭内の火災は決して他人事とはいえない状況です。

なお、令和7年の数値は、令和8年1月2日時点の速報値です。今回参考にした東京消防庁の資料は、以下から確認できます。

《出典》東京消防庁「令和7年中の火災件数が過去10年で最多」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/content/000095700.pdf

家庭には火災の原因となるものが数多くある

住宅には、火災につながる可能性のあるものが数多く存在します。

代表的なものとしては、ガスこんろ、ストーブ、たばこ、電気コード、コンセント、電子レンジなどが挙げられます。近年は、スマートフォンやモバイルバッテリー、コードレス家電など、充電式電池を使う製品も増えています。

東京消防庁の資料によると、令和7年に電気設備機器が発火源となった火災は2,129件で、前年から348件増加しました。これは火災全体の約4割にあたり、過去最多の件数です。

内訳を見ると、モバイルバッテリーなどの充電式電池が244件と最も多く、差し込みプラグが128件、電子レンジが114件、コードが92件、コンセントが88件と続いています。

電気製品は、正常に使用していれば基本的には安全ですが、劣化、破損、過充電、不適切な使用、ほこりの堆積などが重なることで出火につながることがあります。

特にモバイルバッテリーは、落下や強い衝撃を受けると、内部が損傷する可能性があります。膨らみ、異常な発熱、異臭などがある場合は使用を中止し、製造・販売事業者や自治体の案内を確認したうえで、適切に処分する必要があります。

また、差し込みプラグやコンセントについても、家具の裏など見えにくい場所にあると、ほこりの堆積やコードの傷みに気づきにくくなります。

家庭内の火災を防ぐためには、火を使う場所だけでなく、電気製品や配線類も定期的に確認することが大切です。

住宅火災では高齢者の被害が多い

住宅火災で特に注意しなければならないのが、高齢者の被害です。

令和7年中に発生した住宅火災による死者は、自殺を除いて75人でした。このうち60人、約8割が65歳以上の高齢者です。住宅火災による高齢者の死者数も、過去10年間で最多となりました。

高齢になると、火災に気づくまでに時間がかかったり、避難や初期消火が難しくなったりする場合があります。

一人暮らしの高齢者だけでなく、高齢の家族と同居している家庭でも、火災が起きたときに誰が通報するのか、どの経路から避難するのか、消火器はどこに置くのかを事前に確認しておく必要があります。

住宅火災による死者が発生した原因としては、「たばこ」「ストーブ」「こんろ」が上位となっています。

寝たばこをしない、ストーブの近くに衣類や紙類を置かない、調理中にこんろから離れないといった基本的な対策を徹底することが、まずは重要です。

しかし、どれだけ注意していても、火災の可能性を完全になくすことはできません。万が一出火した場合に備え、早期発見と初期消火の両方を考えておく必要があります。

住宅用火災警報器と消火器は役割が異なる

家庭の火災対策として、まず確認したいのが住宅用火災警報器です。

住宅用火災警報器は、煙や熱を感知し、警報音などによって火災の発生を知らせる設備です。早期に火災に気づくことができれば、速やかな119番通報、初期消火、避難につながります。ただし、住宅用火災警報器は、火災を知らせてくれるものであって、火を消してくれるものではありません。

火災の発生を「知らせる」のが住宅用火災警報器であり、発生した火を「消す」ための道具が消火器です。どちらか一方だけではなく、両方を備えておくことで、住宅の防火対策はより確実になります。

住宅用火災警報器は、設置から10年を経過すると、電池切れや機器の劣化によって作動しない可能性があります。定期的に作動確認を行い、設置から10年を目安に本体を交換することが推奨されています。

設置したまま一度も確認していない場合は、警報器の点検ボタンや点検ひもを使い、正常に音が鳴るか確認してみてください。

家庭にも消火器の設置をおすすめしたい理由

一般的な戸建住宅や共同住宅の各住戸内については、通常、消防法令によって住宅用消火器の設置が一律に義務づけられているわけではありません。一方、共同住宅の共用部分などには、建物の用途や規模に応じて、消火器をはじめとする消防用設備等の設置が義務づけられる場合があります。

法的な義務がないことと、必要性がないことは別の話です。

東京消防庁によると、消火器などの設置が法令で義務づけられている防火対象物で、火災時に消火器等が使用された場合、その奏効率は7割を超えています。

令和6年中のデータでは、消火器等を使用した火災の75.5%で、火災の被害軽減に効果があったとされています。もちろん、すべての火災を消火器で消せるわけではありません。炎が天井に届くほど拡大しているなど、初期消火が難しいと判断した場合は、何よりも避難を優先しなければなりません。

しかし、火がまだ小さい初期の段階であれば、消火器を使用することで、大きな火災に至る前に被害を抑えられる可能性があります。

消火器を備えていなければ、出火したときにできることは限られます。水をかけてはいけない油火災や電気火災もあり、慌てた状態で適切な判断をするのは容易ではありません。そのため、住宅用火災警報器とあわせて、家庭にも住宅用消火器を1本備えておくと安心です。

家庭用には強化液タイプを個人的におすすめしたい

住宅用消火器には、主に粉末タイプと強化液タイプがあります。

どちらにも長所と短所があり、粉末消火器が劣っているということではありません。粉末タイプは、粉末の薬剤で炎を覆い、火の勢いを素早く抑える能力に優れています。広い範囲の火災に対応しやすく、比較的手頃な価格で購入できることも利点です。

一方、一般家庭に置く1本としては、個人的には強化液タイプをおすすめします。その理由は、強化液消火器には、水系薬剤ならではの冷却効果と浸透性があるためです。

粉末消火器は、炎を素早く抑える効果に優れていますが、燃えている物の内部まで薬剤が浸透しにくい場合があります。木材、紙、衣類、布団などに火が残っていると、いったん炎が消えたように見えても、再び燃え出す可能性があります。

これに対して強化液タイプは、薬剤が燃えている物に浸透し、冷却しながら消火します。

総務省消防庁も、強化液消火器について、水系で冷却効果と浸透性に優れ、布団火災や天ぷら油火災に効果的であると説明しています。家庭では、衣類、カーテン、布団、家具、段ボール、紙類など、水分を吸収する物が多くあります。そのため、内部まで薬剤が浸透しやすい強化液タイプは、住宅内で発生する初期火災と相性がよいと考えられます。

粉末消火器を室内で使用すると、細かな薬剤が広い範囲に飛散します。使用状況によっては視界に影響することがあり、家具や家電、衣類、床などに付着した粉末の清掃にも手間がかかります。

強化液消火器と粉末消火器との違い

強化液タイプをおすすめするもう一つの理由が、放射後の視界と後片づけです。

粉末消火器を室内で使用すると、細かな薬剤が広い範囲に飛散します。使用状況によっては視界に影響することがあり、家具や家電、衣類、床などに付着した粉末の清掃にも手間がかかります。

強化液タイプは液体の薬剤を霧状に放射するため、粉末のように細かな粉が室内に広がることはありません。製品によって薬剤の性質は異なりますが、中性強化液を使用した製品の中には、使用後の清掃のしやすさを特徴としているものもあります。

また、強化液タイプには、粉末タイプより放射時間が長い製品もあります。一定の放射時間が確保されていることは、火元を狙って操作するうえでの利点の一つと考えられます。

ただし、強化液タイプにも、価格や重量の面で粉末タイプとの違いがあります。

一般的に、住宅用の強化液消火器は粉末タイプより価格が高い傾向があり、製品によっては本体重量が重い場合もあります。また、強化液消火器であっても、すべての製品が同じ種類の火災に対応しているわけではありません。消火器には、対応できる火災の種類として「普通火災」「油火災」「電気火災」などの適応火災が表示されています。

購入する際は、本体に表示されている適応火災を確認し、家庭内で想定される火災に対応した製品を選ぶことが大切です。

住宅用強化液消火器は8,000円台から購入できる

住宅用の強化液消火器は、メーカーや容量、デザイン、販売店によって価格が異なりますが、おおむね8,000円から10,000円程度で販売されている製品が多く見られます。販売店や時期によっては7,000円台で購入できる場合もありますが、送料や古い消火器の引取サービスの有無によって、実際の購入費用は変わるようです。

粉末タイプと比較すると少し高く感じるかもしれませんが、消火器は数年間使用する防災用品であり、火災による生命や財産への被害を考えれば、決して高すぎる金額ではないと思います。

例えば、8,000円の消火器を5年間使用すると考えれば、1年当たりでは1,600円、1か月当たりでは約130円です。

もちろん、価格だけで選ぶべきではありません。

「国家検定合格表示」がある住宅用消火器か、使用期限はいつまでか、自分や家族が持ち運べる重さか、家庭内で想定される火災に対応しているかを確認するようにしてください。

住宅用消火器には、本体に「住宅用消火器」と表示されており、日本消火器工業会のホームページでも、メーカーごとの製品を確認できます。

消火器は置き場所が重要

消火器は、購入するだけでは十分ではありません。火災が発生したとき、すぐに取り出せる場所に置いておく必要があります。

押し入れの奥や、高い棚の上、家具の裏など、取り出しにくい場所に置いてしまうと、いざというときに使用できません。設置場所としては、キッチンの出入口付近や廊下など、火災が起きやすい場所に近く、なおかつ火元から少し離れた場所が適しています。

例えば、こんろのすぐ横に消火器を置くと、こんろから出火した際に、火や熱によって近づけなくなる可能性があります。火元になり得る場所の近くでありながら、安全に手を伸ばせる位置に設置することが大切です。

また、家族全員で置き場所を共有してください。

消火器があることを知っていても、どこに置かれているかわからなければ、緊急時には役に立ちません。高齢者や子どもがいる家庭では、誰が消火器を使うのか、誰が119番通報をするのか、誰が避難を誘導するのかも話し合っておくとよいでしょう。

消火器の基本的な使い方

一般的な消火器は、次の手順で使用します。

まず、安全栓を上に引き抜きます。次に、ホースやノズルを火元に向けます。そのうえで、レバーを強く握り、薬剤を放射します。

放射するときは、炎の上部ではなく、燃えている物の根元を狙います。製品によって放射距離が異なるため、本体表示や取扱説明書を事前に確認しておくことも大切です。また、玄関など、後方に避難できる経路を必ず確保したうえで使用してください。

ただし、消火器による初期消火には限界があります。炎が天井に届いている、煙が急激に増えている、熱くて火元に近づけないような場合は、初期消火自体を諦め、すぐに避難してください。

また、消火器で消火できた場合であっても、内部に火が残り、再び燃え出す可能性があります。消火できたように見えても119番通報を行い、消防隊の確認を受けることが重要です。

消火器の期限と状態を定期的に確認する

住宅用消火器の使用期限は、一般的に製造から約5年ですが、製品によって異なります。東京消防庁の資料でも、住宅用消火器の耐用年数の目安は約5年とされています。本体に記載されている使用期限を確認し、期限を過ぎている場合は交換してください。

また、容器にさび、へこみ、変形、腐食などがある消火器は危険です。古い消火器を無理に使用したり、操作したりすると、容器が破裂するおそれがあります。

不要になった消火器は、原則として一般ごみとして処分できません。消火器販売店などの特定窓口や指定引取場所を利用し、消火器リサイクル制度に従って適切に処分してください。

火災を起こさない対策と、起きた後の備えをセットで考える

火災対策で最も重要なのは、出火させないことです。

寝たばこをしない、調理中にこんろから離れない、ストーブの近くに燃えやすい物を置かない、傷んだコードを使わない、モバイルバッテリーに異常があれば使用を中止するといった日常的な対策が基本となります。

その一方で、どれだけ注意していても、火災が起きる可能性をゼロにはできません。

だからこそ、火災を早く発見する住宅用火災警報器と、火が小さい段階で消火するための住宅用消火器を備えておく必要があると考えます。

住宅火災が過去10年間で最多となっている今、自宅に消火器があるか、使用期限が切れていないか、家族全員が置き場所を知っているかを、改めて確認してみてください。

「自分の家では火災は起こらない」と考えるのではなく、「万が一起きたときに、何ができるか」という視点で、家庭の防火対策を見直してみてはいかがでしょうか。

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