楽しいバーベキューの後に潜む「残り火」の危険
9月に入り、まだ厳しい暑さが続く日もありますが、これから秋が深まるにつれて、本格的な行楽シーズンを迎えます。家族や友人、職場の仲間とキャンプ場や河川敷などへ出かけ、バーベキューを楽しむ機会も増えていくのではないでしょうか。
屋外でのバーベキューは楽しい一方、炭や着火剤などの取り扱いを誤ると、やけどや火災につながる危険があります。特に注意したいのが、調理を終えた後の火の始末です。
炭は、表面から炎や煙が見えなくなっていても、内部に高温の火種が残っていることがあります。「煙が出ていないから消えた」「水を少しかけたから大丈夫」と判断して持ち帰ったり、ごみ箱に捨てたりすると、時間が経ってから周囲の物に着火する可能性があります。
バーベキューは、食事が終わったら終了ではありません。使用した炭を完全に消火し、安全に処理するところまでがバーベキューです。
今回は、過去に発生したバーベキュー火災の事例を紹介しながら、炭火の安全な消火方法や、火の始末をするときの注意点について解説します。
バーベキューの炭は簡単には消えない
木炭は、一度着火すると内部まで高温になり、表面から炎が見えなくなった後も燃焼を続けることがあります。
岐阜市は、炭は着火すると徐々に温度が上昇し、800℃程度まで達すると説明しています。また、炭の表面に水をかけた程度では完全に消火できず、内部に火が残っている場合があるとして注意を呼びかけています。
表面が灰で白くなり、煙が出ていない炭でも、内部に火種が残っている可能性があります。消火が不十分な炭を段ボール、紙袋、ビニール袋、ごみ箱などに入れると、その熱によって周囲の可燃物が燃え出すおそれがあります。
炭の火が消えたかどうかを、見た目だけで判断してはいけません。
《参考》岐阜市「バーベキュー等で使用した『炭』の処理は確実に!」
https://www.city.gifu.lg.jp/kurashi/syoubou/1001472/1001483/1001494.html
過去に発生したバーベキュー火災の事例
東京消防庁は、バーベキューに起因して実際に発生した複数の火災事例を紹介しています。
1.消火しなかった炭火が強風で飛散した事例
河川敷で石を組んだかまどを作り、炭を燃やしてバーベキューをした後、火を消さないままその場所を離れた事例です。
残されていた炭火が強風によって飛散し、周囲の枯れ草に着火しました。その結果、枯れ草約1,600平方メートルが焼損しています。「そのうち自然に消えるだろう」と考えて、火のついた炭を残したままその場を離れることは非常に危険です。特に風が強いときは、火の粉や小さな炭が飛ばされ、枯れ草や落ち葉などに燃え移る可能性があります。
2.火種の残った炭を車に積んで出火した事例
バーベキューで使用した炭を、段ボールに入った未使用の炭と一緒にして、自動車に積んで走行していたところ、焦げ臭いにおいがして、トランク内から煙が出ていることに気づいた事例です。使用済みの炭に火種が残っていたため、段ボールに着火し、車両のフロアマットなどが焼損しました。
消火したつもりでも、炭の内部に火種が残っていることがあります。使用済みの炭を可燃物と一緒に収納したり、十分に冷えていない状態で車内へ積み込んだりしてはいけません。
火消し壺を使用した場合も、壺や内部の炭が高温になっている可能性があります。すぐに車へ積み込むのではなく、完全に消火・冷却できていることを確認する必要があります。
3.着火剤を継ぎ足して着衣に燃え移った事例
バーベキューコンロの火力が弱かったため、燃えている炭にゼリー状の着火剤を継ぎ足したところ、炎が急激に燃え上がり、着火剤を扱っていた人の衣服に燃え移った事例です。
一度火をつけた後に、着火剤や消毒用アルコールを追加してはいけません。着火剤の種類によっては、明るい屋外では炎が見えにくい場合があります。炎が消えているように見えても、着火剤の蒸気などに引火し、手元まで一気に炎が広がる可能性があります。
《参考》東京消防庁「バーベキュー時の火災にご注意ください」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kasai/barbecue.html

バーベキューを始める前に確認したいこと
火の始末を安全に行うには、バーベキューを始める前から準備しておくことが重要です。
まず、利用するキャンプ場や公園などのルールを確認します。火気を使用できる場所、使用できる器具、炭の消火方法、炭捨て場の利用方法などは、施設によって異なります。指定された炭捨て場がある場合でも、火がついたままの炭を捨ててよいとは限りません。必ず施設管理者の案内に従ってください。
また、次の事項も確認しておきましょう。
・バーベキューが許可された場所であるか
・コンロの周囲に枯れ草や落ち葉などがないか
・コンロが転倒しない安定した場所に設置されているか
・風が強く、火の粉が飛びやすい状態ではないか
・すぐに使用できる水や消火用具が用意されているか
・火を管理する大人が決まっているか
・着火剤やコンロの取扱説明書を確認しているか
河川敷や山林などでは、地域や時期によって火気の使用が禁止または制限されている場合があります。利用場所の管理者や自治体の案内を事前に確認してください。
空気が乾燥しているときや風が強いときは、火の粉が周囲へ飛びやすくなります。安全に火を管理できない状況であれば、バーベキューを中止または延期する判断も必要です。
バーベキュー後の正しい火の始末
炭の処理方法には、主に「火消し壺を使用する方法」と「水に浸して消火する方法」があります。どちらの方法を選ぶ場合も、利用施設や製品のルールを優先してください。
1.終了時間を考えて炭の追加をやめる
終了時間の直前まで炭を追加すると、片づけの時間になっても大量の炭が高温のまま残ってしまいます。帰る時間から逆算し、早めに炭の追加をやめましょう。必要以上に多くの炭を使用しないことも、安全な火の始末につながります。
炭を燃やし切る場合でも、途中でその場を離れてはいけません。燃焼中は継続して監視し、最後に確実な消火と冷却を行います。
2.火消し壺を使用する
火消し壺は、燃えている炭を入れてふたを閉め、空気の供給を遮断することで消火するための器具です。炭ばさみなどを使って炭を火消し壺へ移し、ふたを確実に閉めます。火消し壺は使用中や使用直後に高温となるため、木製の床、ウッドデッキ、枯れ草、段ボールなどの上や近くには置かないでください。
安定した不燃性の場所に置き、周囲の可燃物から安全な距離を確保します。炭が完全に冷える前にふたを開けると、空気が供給され、再び燃え始める可能性があります。
また、火消し壺に入れたからといって、すぐに物置や車内へ収納することは危険です。容器そのものが高温になっている場合があるため、十分に冷えるまで安全な場所で管理してください。
3.水に浸して消火する
水を使用する場合は、水を張った金属製のバケツなどを用意し、炭ばさみを使って炭を少しずつ水の中へ移します。高温の炭を一度に大量に入れると、多量の水蒸気が発生し、やけどをする危険があります。顔や手を近づけず、炭を一つずつ静かに入れてください。
炭の表面に水をかけるだけでは、内部まで十分に水が浸透しない可能性があります。炭全体を水に浸し、内部まで確実に消火するための時間を確保することが重要です。
コンロに入った高温の炭へ、上から大量の水を一気にかけることも避けましょう。水蒸気や灰が舞い上がり、やけどをするおそれがあります。また、器具の材質によっては、急激な温度変化によって変形や破損が生じる可能性もあるため、製品の取扱説明書や施設のルールを確認してください。
4.完全に冷えてから処分する
消火した炭は、煙、蒸気、熱気がなくなり、内部まで完全に冷えたことを確認してから処分します。十分に冷えていない炭を、段ボール、紙袋、ビニール袋、ごみ箱などへ入れてはいけません。施設に炭捨て場がある場合は、管理者の指示に従って処分します。
使用済みの炭を持ち帰る場合は、完全に消火・冷却したうえで安全な容器を使用し、周囲の可燃物と接触させないようにします。帰宅後の処分方法についても、居住する自治体のごみ出しルールを確認してください。
炭を土の中に埋める方法も適切ではありません。岐阜市も、土に埋める方法は火災やけがの原因となるおそれがあるとして注意を呼びかけています。
やってはいけない火の始末
バーベキュー後の火災は、使用中だけでなく、片づけや持ち帰りの途中にも発生します。
次のような行為は避けてください。
・炎や煙が見えないだけで、火が消えたと判断する
・炭に水を少しかけただけで、ごみ箱へ捨てる
・火のついた炭を土に埋める
・炭を枯れ草や落ち葉の近くに放置する
・熱い火消し壺を木製の床や段ボールの近くに置く
・十分に冷えていない炭や火消し壺を車へ積む
・炭火を残したまま、その場を離れる
・燃えている炭に着火剤やアルコールを継ぎ足す
「少しくらいなら大丈夫」「移動中に自然に冷えるだろう」という判断が、火災につながる可能性があります。万が一、火が周囲へ燃え移り、自分たちで安全に消火することが難しい場合は、無理に近づかず、安全な場所へ避難して119番通報してください。
最後まで安全に火を始末し、楽しい秋の思い出を火災事故に変えないようにしましょう。








