民泊の防火管理者の問い合わせが増えている
ウィズ・コロナへの政策転換から、訪日外国人の姿を街中で見かけるようになってきました。
このような環境の変化が影響しているのかはわかりませんが、『民泊』を経営する企業からのお問い合わせが増えています。
そもそも民泊とは、戸建住宅やマンション等の全部または一部を活用して宿泊サービスを提供することの総称で明確な定義はないようです。
しかしながら、空き家や空室を貸したい人と宿泊を希望する旅行者とをマッチングするビジネスモデルは、アメリカのAirbnb(エアビーアンドビー)を筆頭に全世界で急速な広がりをみせており、それは日本においても例外ではありません。
東京オリンピックの開催前は、訪日外国人向けの宿泊施設不足が懸念され、民泊に大きな期待が寄せられましたが、コロナの蔓延でその心配は杞憂に終わりました。
それでも、ダボス会議の開催などで知られる国際機関、世界経済フォーラムが発表した2021年版「旅行・観光開発指数」の世界ランキングで日本が初めて首位になったことが示すように、観光立国を目指す日本の魅力は世界で高く評価されています。
昨今では(欧米諸国と比較しての)物価安を追い風に日本の魅力がさらに高まっているように思いますので、この先のさらなる訪日外国人の増加に伴い、民泊の需要も盛り上がっていくことが予想されます。
マンションの一室を民泊にすると防火管理者が必要になる?
まずをもって、国内全ての建物に防火管理者が必要というわけではありません。
例えば、共同住宅の場合、収容人員(居住者の数)が50人以上で防火管理者が必要とされるため、単身者向けの小規模マンションでは防火管理者が不要とされるケースも少なくありません。
しかしながら、そのような小規模マンションであっても住宅の1室を丸ごと民泊とした場合、基本的には消防法で規制の厳しい『特定防火対象物』扱いになることから、収容人員が30人以上で防火管理者が必要となり、さらには地階を除く建物の階数が3以上であれば、統括防火管理者の選任も必要となる可能性が高くなります。
実際に「民泊を始めた結果、消防設備の改修と防火管理者の選任を消防署から求められた」というお客様がいらっしゃいました。
当社にお問い合わせがある民泊の業態としては、建物の中の1室もしくは数室を民泊にするケースと建物全体を民泊として運営するケースがありますが、一般的なホテルや旅館と違い、民泊には次のような特徴があります。
- フロントがなく、スマートキーを使用して利用客が出入りする
- 建物自体に従業員が常駐していない
- 利用客の滞在日数が長い
- 滞在期間中、室内清掃が入らない
防火管理者の観点としては、利用客の滞在日数が長いことへの対応が難しいと感じます。それは、民泊専有部に対する防火管理を消防署から求められる中で、空室になるタイミングが少なく、かつ室内清掃が入らないということは、民泊専有部の確認が困難であることを意味するためです。

民泊施設にはキッチンが備わっていることが多いため、火の元の取り扱いには十分注意しなくてはいけません。さらには、外国人の利用者が多いことから、万一火事になった際に初期消火や退避がスムーズにできるよう、消防用設備等の管理をしっかりしなくてはいけません。
そのため、民泊事業者からの問い合わせの際には、管轄の消防署と防火管理の手法を密に話し合い、消防計画に反映させるようにしています。
民泊の防火管理は消防署によって考えが様々ですが、基本的に従業員が常駐していない事情から、運営会社による防火管理者の選任は困難との理解があり、どの消防署も親身になって相談に乗ってくれるので安心です。
先日お問い合わせいただいた民泊物件の例でいえば、利用者の滞在期間中に室内清掃が入らないため、月1回の建物共用部の巡回防火点検に加え、清掃業者に防火管理に特化したチェッククシートを活用いただくことで、消防署に外部委託を認めていただきました。
このように民泊のお問い合わせについては、消防署との打合せの機会が増えることで、見積もりの提出までに多少の時間を要しますがご了承ください。
どのような物件であっても「防火管理者のなり手不足の解消」のお手伝いができるよう、当社として最大限の努力をいたします。
