都内のある繁華街に立つ、築年数の経過した複合型(住居と店舗・事務所が混在する)分譲マンションからの相談依頼内容は、「防火管理者のなり手がいないので委託したい」という、よくあるケースでしたが、よくよく掘り下げてみると、
「防火管理者がいない」というより「いなくなった」
いや「気がついたらいなかった」
つまり、防火管理者だった区分所有者が死亡していた、というものでした。
◯高齢化したマンションに多い「幽霊防火管理者」
防火管理者が死亡した場合、速やかに新たな防火管理者を立てて消防署へ変更の届け出を出さなければなりません。
しかしこちらのマンション、この亡くなった方が相当前に防火管理者を引き受けていて、管理組合としても安心してしまい、ほぼ名義貸しのまま誰も気づかず今日に至ったようなのです。
防火管理者の選任制度は、「建物管理者(オーナー)が自ら消防署へ届け出る」「変更がある場合も自ら届け出る」という届け出制であり、消防署がのほうから定期チェックが入るわけではないため、今回のような「気が付いたら防火管理者がいなかった」「いない状態が続いていた」ということが起こりうるのです。
管轄の消防署による抜き打ちの立入検査(査察ですね)が入り、「防火管理者が実在していなかった」ことがわかり、かつ統括防火管理者を新たに選任する義務があることも判明し、当社へ外部委託の依頼があったのでした。
◯防火管理者の未選任は建物管理者(オーナー)のリスク
どんな理由であれ、防火管理者や統括防火管理者の未選任は、建物オーナー(今回の分譲マンションにおいては「管理組合理事長」)にとってリスクです。
防火管理者が選任されていないことだけでも消防法違反ですが、未選任ということは、実態として巡回点検や消防(避難)訓練など法律に基づいた防火管理業務を行っていない、ということでしょうから、万が一の火災事故発生時に、ソフト面の不具合を放置していたことが罪に問われるリスクが高くなります。
まずは定期的に防火管理者の選任状況チェックから行ってください。
まずは小さな一歩から。
《確実な防火管理が建物オーナーと不動産価値を守る》