繁華街の雑居ビルは防火管理者泣かせ
ご無沙汰しています、防火管理者のこづっきです。マンション管理士としてのコンサルタント業務と並行して活動を続けてきた防火管理者の委託事業が、お陰様で800建物を超えまして、消防法に定める防火管理者としての仕事である『日常の防火管理』をチームで行うようになっています。
そこで今回は、他のメンバーが対応した事例をご紹介させていただきます。
一番の難敵『雑居ビルの避難階段へ私物』
東京消防庁管轄、山手線駅近くの繁華街にある、深夜営業店舗が入居する雑居ビル(Zビルとします)です。こちらは建物オーナー様から統括防火管理者を受託したときに、社内で『引き受けるかどうか』たいへん迷った建物でした。
というのも、複数のテナントによる廊下や階段の使用方法がかなり酷く『いま大地震と火災が同時に起こったら、ここで働く従業員や利用者は高確率で逃げ遅れてしまう可能性が高い』状態であり、この状態をテナントに改善させるのは困難と考えられたためです。
多くの雑居ビルは『深夜営業時間は廊下・階段もまあまあ綺麗だが、閉店後の早朝から夕方にかけて私物が共用部に溢れ出る』『特に飲食店は食材やおしぼり・ビールの樽などが共用部へ置かれる(店舗が開いていないから、宅配業者も仕方なく店舗前に置いていってしまう』という状態のところが多いです。
たしかにこの手の雑居ビルは昼間の人口密度がほぼゼロのため災害時も人身被害は少なそうですが、テナントによっては昼間も営業しているところもあり、廊下や階段の私物残置は本当に頭痛の種です。
しかしこちらのZビルは『昼夜問わず』『狭い共用階段にまで私物が残置され』『かろうじて昇降ができた』ような状態でした。建物オーナーも管轄の消防署から指摘を受けたものの、どうしようもなく、当社へ相談されたと思われます。
当社でメンバーが事前下見を行った上で『それでも、やれることはやってみよう』と統括防火管理者を受託しました。
防火管理者はしつこく:私物にイエローカードを出し続ける
当社では、統括防火管理者の業務として消防法に定められている『日常の防火管理』の一環として、スタッフによる防火巡回点検を欠かさず実施しています。こちらのZビルも同様に点検を実施しています。
ただ、基本的に巡回点検は午前から夕方までの時間帯に行いますが、Zビルはたまに時間帯を変えて、時に夜の時間帯に点検に行くこともあります。当社代表が深夜の時間帯に行って、動画をとってきたり直接従業員と話してきたこともありました。
こちらのビルは、テナントに対して、階段に置かれた私物へ警告文を貼り続けることにしました。まるでこちらが嫌がらせをしていると誤解されるくらい貼ります。次回に行くと私物が撤去されているところもありますが、警告文が剥がされた私物が置かれ続けているところもありました。
ある程度は減ったものの、依然として一部のテナントは私物を残置し続けていました。直接テナントへ苦情を行っても、店長は雇われで、経営者となかなかつながる事ができないテナントも結構多く、行き詰まります。
防火管理者の奥の手:消防署との連携でキツイお灸を
当社では、通常の点検メンバーによる対応で拉致が開かない場合、事業責任者の出番となります。
・建物オーナーの強力な協力を要請する(協力してもらえない場合、建物オーナーが防火管理に対する意識が希薄だとして、契約解除も辞さない)
・テナントの経営者を探し出し直接注意する
・貼り紙のレベルを上げて過激にしていく
それでも駄目な場合、最後から2番目の方法として『消防署へ言いつける作成』に出ます。Zビルの現状を写真や動画に収め、当社がこれまで継続してきた対応を共有した上で、消防署の方に現地を見て頂きます。そして、強力な指導をお願いするのです。
消防署の方が直接テナントを訪問して注意したり、上の画像のように私物へ直接警告文を貼っていただきます。
ここまでやると、かなりの確率で私物が減ります。
しかし、一定期間がすぎると、再び私物が置かれます。当社では継続して証拠としての写真と点検報告書拠を残し、消防署の方が対応を強めることのサポートを行います。
雑居ビルの統括防火管理者は粘り強さが肝心
実際に雑居ビルでは新宿・歌舞伎町の雑居ビル火災や、最近では大阪・北新地の雑居ビルにおける放火事件など、とにかく雑居ビルは火災発生時における人災リスクが高い建物です。建物オーナーからお金を頂いて、プロとして統括防火管理者をお引き受けした以上、とにかく法令遵守でやれることは徹底的に実行するのが当社の仕事です。
なお、雑居ビルの防火管理は、やりがいはあるのですが骨が折れますし、対人的な要素が多く、一人ではとてもできないので、チームで対応できるのはありがたいですね。
※防火対象物点検も当社でやっています。よろしければご相談下さい。
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