マンション住民が消防訓練に集まらない理由とその対策

防火管理者こづっき
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マンションの消防訓練に人が集まらない理由と、参加率を高めるための実践的な工夫

防火管理者のこづっきです。

一定規模以上の建物では、消防法に基づき「年に1〜2回の消防訓練」が義務付けられています。しかし実際には「参加者がほとんど集まらない」「住民の関心が低くて成立しづらい」といった課題を抱える建物が少なくありません。

当社はこれまで何百件もの消防訓練を外部委託として実施してきましたが、現場で感じるのは「消防訓練の参加率が低いのは珍しいことではない」という現実です。

そこで本コラムでは、共同住宅(マンション)にターゲットを絞り、①なぜ消防訓練に人が集まりにくいのか、②参加率を高めるための工夫、③最後に総括としてのまとめ、という流れで詳しく解説します。

消防訓練に人が集まりにくい理由

消防訓練の参加率が思うように伸びない背景には、いくつかの共通した理由があります。実際に数多くの現場を担当する中で見えてきた、“人が集まりにくい根本要因”を整理すると、主に次の3点に分けられます。

■1. 日常では火災を“自分ごと”として想像しづらい

多くの住民にとって火災は「滅多に起きないもの」「自分には関係ないもの」と受け止められがちです。とくに都市部の分譲マンションでは忙しい世帯が多く、仕事や家事との両立で時間が取れなかったり、単純に面倒に感じてしまったりと、消防訓練の優先度が下がってしまう傾向があります。

こうした背景から、火災のリスクを日常生活の延長として具体的に想像しにくいことが、参加率が伸びにくい大きな要因になっていると感じています。

■2. 案内をしても全世代に響くとは限らない

当社では、消防訓練の案内文を原則として1か月前に全戸へポスティングし、併せて掲示板にも掲示しています。住戸数が多いマンションでは専用の印刷会社に依頼し、見やすい光沢紙を使うなど、品質面にも配慮しています。

一方で景観に配慮してシンプルなデザインとしているため、あえてイラストや色彩を多用していません。その結果、特に子育て世帯や若い世代にとっては「視覚的に捉えにくい」「印象に残りにくい」というケースもあります。どれほど丁寧に作成しても、すべての世代に均等に届く案内を作ることは容易ではないと実感しています。

■3. マンションのコミュニティ活性度に大きな差がある

マンション内で日常的なコミュニケーションが少なく、情報が十分に行き届かない環境では、消防訓練の案内も住民に届きづらく、結果として参加率が伸び悩むことがあります。掲示板やポスティングに気づいてもらえない、訓練そのものが話題として住民間で共有されないといった状況では、参加のきっかけが生まれにくいのが実情です。

また、理事会から住民への発信が限定的な場合、マンション全体としての“一体感”が育ちにくく、訓練が「自分とは関係の薄い行事」と受け止められてしまうこともあります。日頃から情報が自然に届く環境が整っていないと、消防訓練に関心を向けてもらうこと自体が難しくなるのです。

このように、マンション内のコミュニティの活性度や情報共有の仕組みは、消防訓練の参加率に大きな影響を与える要素だと感じています。

消防訓練の参加率を高めるための実践的な工夫

参加率が伸びにくい理由がある一方で、工夫次第で改善が期待できるケースも数多くあります。ここからは、当社が実務を通して効果を確認してきた「参加率を高めるための具体的な取り組み」をご紹介します。

■1. 告知方法のバリエーションを増やす

当社が基本としているのは「全戸へのポスティング」と「掲示板への掲示」です。テナントが入居している物件では、必要に応じて個別に声をかけることもあります。

一方で、マンション独自の告知手段──たとえば回覧板、マンションホームページ、エレベーター内のデジタルサイネージなど──を活用できる場合は、これらと組み合わせて周知の層を広げることで、より高い告知効果が得られます。

また、理事会役員の皆さまが積極的に参加する姿勢を示すだけでも、住民へ与える影響は大きく、「せっかくだから参加しよう」という気持ちを後押しします。さらに、ご近所同士のちょっとした声掛けが加わることで、参加の輪が自然と広がることを、現場で何度も実感しています。

■2. 訓練を“コミュニティイベント”化する

参加率を高めるうえで効果的なのは、消防訓練を「面倒な作業」ではなく「参加したくなるイベント」として捉えてもらえるよう工夫することです。たとえば、夏祭りや自治会イベントと同時開催したり、子ども向けのスタンプラリーを組み合わせたりすることで、家族で参加しやすい雰囲気が生まれます。

さらに、実務上とても効果があった例として、「消費期限が近付いた防災グッズの無料配布」を訓練と同時に行ったところ、参加率が大きく向上したマンションもあります。このように、住民にとって“参加するメリット”を感じられる仕掛けは、参加促進に確かな効果があります。

消防訓練に参加できなくても防火意識を高める手段はある!

一方で、共働き家庭がほとんどという現代社会において、参加率を上げることは容易ではありません。しかしながら、むしろ参加できないからこそ、自宅でじっくり防火防災について考える機会を設け、同時に消防訓練実施の届出が消防署に対して実施できる方法もあります。

当社では、以下のような提案ができますので、お気軽にご相談ください。

■1. 公式動画をQRコード化した案内リーフレットの配布

東京消防庁をはじめ、各消防署では火災予防に役立つ分かりやすい動画を公式YouTubeチャンネルなどで公開しています。これらのうち、事前に許可を得た動画のURLをQRコード化し、「避難」「消火」「通報」といった消防訓練の必須項目ごとにまとめた案内リーフレットを全戸へポスティング、または配布することで、消防訓練の実施とみなすことができます。

メリットとして、専門家が制作した動画であるため説得力と解説の質が高いこと、さらに実地訓練とは異なり、住民の皆さまがご家庭の都合に合わせて自由な時間に学習できる点が挙げられます。

ただし、消防署によっては「実地での訓練のみ」を消防訓練として推奨している場合もあります。そのため、実施前に管轄の消防署へ相談し、この実施方法が認められるかを確認する必要があります。

《参考》東京消防庁公式チャンネル
https://www.youtube.com/@tokyo_fire_dept

■2. オンライン形式(Zoom)による消防訓練の実施

法令で求められる消防訓練を、オンライン(Zoom)を用いて実施する方法です。オンライン訓練では、当社の中でも特に消防に関する知識や経験が豊富なスタッフが講師を担当するため、日頃疑問に思っている点をその場で直接質問することができます。また、PCやスマートフォンなどのデバイスがあれば参加できるため、場所を選ばず柔軟に受講できる点も大きなメリットです。

なお、このオンライン訓練は「消防訓練サポートサービス」という、消防訓練の実施のみを対象とした商品に位置づけられています。防火管理者外部委託サービスをご利用中のお客様につきましては、別途ご相談ください。

実地訓練に参加できなかった方を対象に、「消防訓練の手引き」として実地訓練で使用した資料を全戸へポスティングまたは手渡ししています。

まとめ 〜消防訓練は“命を守る唯一の体験”〜

消防訓練は、法律で義務付けられているだけでなく、住民の命を守るための大切な機会です。しかし、参加率が低いと訓練の効果が十分に発揮されず、いざというときに適切な行動が取れない危険性があります。また、参加できなかった住民にも必要な情報が行き届く仕組みを整えることで、マンション全体の防災水準を高めることにつながります。

当社では、実地訓練に参加できなかった方を対象に、「消防訓練の手引き」として実地訓練で使用した資料を全戸へポスティングまたは手渡ししています。本資料には、「消火」「避難」「通報」に必要なポイントが整理されており、特に実地訓練では実施が難しい「屋内消火栓」の仕組みや取り扱い方法まで分かりやすく説明しています。

このように、防火管理者が自ら訓練を実施する場合であっても、参加できなかった住民へのフォローは欠かせない対応といえます。一方で、防火管理者資格の講習内容には、消防訓練の企画や進行といった実務的なノウハウが十分に盛り込まれていないのが実情です。そのため、実際の運用に不安を抱える防火管理者の方も少なくありません。

当社では、こうした課題を解消するために、訓練計画の作成から消防訓練の実施、日常の防火点検、消防署とのやり取りまで、防火管理者に求められる一連の責務を総合的に支援する「防火管理者外部委託サービス」を提供しています。また、日頃の防火点検など、すでに防火管理者として必要な責務を果たしている場合には、消防訓練の実施に特化した「消防訓練サポートサービス」をご利用いただくことも可能です。

消防訓練は、いざというときに住民の命を守る“唯一の体験”です。参加率向上の工夫や、参加できない住民への情報提供、そして必要に応じた専門サポートの活用により、マンション全体の防災力をより確かなものにしていくことができます。

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