駐車場の消火設備が有害物質を含んでいる可能性があります
防火管理者のこづっきです。
先日、消防訓練にご参加いただいたお客様から、「このマンションに有害なフッ素が使われている消火設備はないか?」という質問を受けました。この質問にはその場で詳細をお答えできず、大変申し訳ありませんでした。その後、当社の甲種第2類(泡消火設備)という特殊な資格を持つ消防設備士に確認しましたが、最終的には消防設備会社に確認していただく必要があるという結論に至りました。
この有害な物質を含む消火設備について調べたところ、次のような内容であることがわかりました。
平成21年(2009年)5月に開催された「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)の締結国会議」において、「PFOS(ペルフルオロオクタンスルフォン酸)(以下「PFOS」という。)およびその塩」が製造・使用等を禁止する物質に追加されました。
PFOSとは、フッ素系界面活性剤やコーティング剤の合成過程で生成される物質で、機械泡消火薬剤や中性強化液消火薬剤の一部に含有されていたものです。
《出典》一般社団法人日本消火器工業会 ~PFOS等を含有する消火器・消火薬剤の取扱いについて
https://www.jfema.or.jp/pfas/pfos/
PFOSの健康や環境への影響をさらに詳しく調べると、非常に深刻な状況であることがわかります。
健康への影響
- PFOSは体内に蓄積しやすく、長期的な曝露により肝臓、免疫系、生殖系に影響を及ぼす可能性がある
- 動物実験では、発がん性や発育障害のリスクが指摘されている
環境への影響
- PFOSは自然環境中で非常に分解されにくく、水域や土壌に長期間残留する
- 生物濃縮性が高く、食物連鎖を通じて高濃度で生物に取り込まれることがある
PFОS含有の可能性がある消火設備は、「機械泡」と「強化液(中性)」の消火薬剤を使用した設備や消火器に絞られますが、「2011年」以降に製造された消火器にはPFOSは含まれていません。あらゆる建物で広く使用されている粉末消火器にはそもそもPFOSは使用されておらず、近年利用が広がっている強化液消火器も現在販売されているものにはPFОSは含まれていないため、安心して購入できます。
「機械泡消火器」を共同住宅で見かけることはほとんどなく、ごく稀に飲食店の厨房に置かれている程度ですが、駐車場などに設置された「泡消火設備」がPFОS含有に該当するケースがあり、この設備の更新の際には大きな出費を伴うことになります。当社に所属する消防設備士によると、国内の半数以上の泡消火設備が該当していると言われており、実際に港区にある共同住宅の設備更新の際には、多額の費用の捻出に管理組合が非常に苦労していたとのことです。
ちなみに、泡消火設備とは水では消火が難しい油火災に有効とされる消火設備です。消火薬剤に空気を送り込むことで泡状にし、比重を軽くして油の表面を覆い消火します。泡消火設備のメリットとデメリットは以下の通りです。
泡消火設備のメリット
- 迅速な消火: 泡が火災現場を素早く覆い、酸素の供給を遮断するため、迅速に火を消すことができる
- 冷却効果: 泡が燃焼物の温度を下げ、再燃を防止する
- 有害ガスの抑制: 燃焼によって発生する有害ガスの発生を抑えることができる
泡消火設備のデメリット
- 設置コスト: 設置には高い初期コストがかかることがある
- メンテナンス: 定期的なメンテナンスが必要
- 環境への影響: 前述の通り、使用する泡の種類によっては、環境に悪影響を及ぼすことがある
消防訓練に参加すると、普段あまり意識しない防火防災意識が高まります。これは非常に重要なことで、緊急時における家族の安全を見直す良い機会となりますので、ぜひ定期的にご参加ください。ほとんどの共同住宅には消火器が設置されていますが、火災が発生した際に使用方法がわからないと、住人の生命に影響する可能性があります。
また、ほとんどの共同住宅では消防訓練の実施が義務化されていますが、実際には一度も訓練を行ったことがない例も少なくありません。このような状態で重大な火災事故が起きた場合、防火管理上の最高責任者である管理権原者(建物オーナー等)や防火管理者に刑事責任が問われる可能性がありますので、必要とされる回数以上の消防訓練を毎年実施するようにしてください。
当社では、防火管理者に必要な責務を果たしていることを条件に、消防訓練をサポートするサービスをご用意しています。もし防火管理者業務が十分に行われていない場合には、防火管理者自体を当社で引き受け、必要な業務をすべて実施しますので、安心してお任せください。