防火管理者は放火を防ぐ知識を持っていない
代表で防火管理者の深山(みやま)です。7月23日、大阪府守口市のウレタン加工工場から火災が発生し、近隣の戸建に延焼した事故がありました。死傷者が出なかったことが不幸中の幸いです。
(ANNnewsCHさんより。https://www.youtube.com/watch?v=qc6QRKn63zA)
さて、7月19日の京都アニメーションで起こった放火事故で、亡くなられた方の多くが「煙を大量に吸い込んで起こる『一酸化炭素中毒』」ではなく、炎による焼死だったことが、京都市消防局からの報告で明らかになりました。
僕は当初のブログ『京都アニメーション放火事件『炎と煙』』で、お亡くなりになった方の多くが『炎よりも煙』が原因だと、推測して書いていました。一酸化炭素中毒で倒れたところにらせん階段を通じて炎が上がったのかもしれません。
京都市消防局は23日、京アニが防火管理や消防設備については適正に維持管理をしていたことを報告。
それでも多くの死傷者が出てしまいました。
放火は人為的なもので、かつ突然のものです。今回のようにガソリンを撒かれたら一気に炎と煙が広がってしまいます。
ただでさえ火災は想定外なのに、さらなる想定外が重なります。
正直なところ、僕たちが取り組んでいる『防火管理者』のサポートでは、情けないけれど今回の放火事件を防いだり、被害を最小化させる術を知りません。
地震が起こったときのほうが、机の下に潜る・キッチンの火や電気のスイッチを消すなど、まだ身の処し方を理解していますが、放火された場合のための有効なアドバイスができる自信はとてもありません。
もし自分の眼の前で放火されたらどうする?
そこで、何をしたら良いか?
実は僕、この仕事を始めてから、地下で出入り口が一箇所しかないような飲食店にはほぼ行きません。(地下で営業している方、ごめんなさい)
もちろんお店で防火対策は施されれているとは思いつつ、イザというときの逃げ道が絶対的に少ないことが無意識のうちにリスクと判断していたのだと思い起こします。
想像する、想像する。イメトレです。イメトレしかないのだと思います。
想像して行き着いたことは、
『今から、万が一を想定して、建物外へ逃げ切れるルートを意識しておく』
これしかない、という結論に至りました。
防火管理者としておすすめの放火対策は「逃げるためのイメトレ」
放火に限らず、火災事故や地震など、あらゆるスクランブル時に逃げるルートを持っておく。
火災の場合は最初に消火器を使うことが第一かもしれませんし、地震の場合は最初に机に潜って潰されないようにすることが最初の対応ですが、今回の京アニの事件を見る限り『短時間で猛烈な勢いで炎が舞い上がり煙が充満する』ことを想定しなければならず、消火器とか机の下とか言っていられないのだと思います。
僕が実際に放火される現場にいることを想像します。例えば、このコラムを書いているオフィス内で放火された場合を想像します。
とにかく想像、想像、想像することで、想定外のことを想定内にしておかなければなりません。
すると、やはり『即逃げる』これしかない。
なので、即逃げるためのルートを確認しておく。
避難ルートはどこか?誘導灯は?
扉はすぐに開くか?
最終的に飛び降りても死なない高さか?(3階位までは大怪我を覚悟で思い切って飛び降りる覚悟を持っておく、とか)
商業地域のビルなら、思い切って隣のビルに飛び移れるかも考えておく。
とにかく『今回の京アニさんのような、人為的かつ突発的なトラブル』を想像して、イメトレしておく。
これしかない、と思っています。
『自分が放火されること』など、人生において一度もない方がほとんどだと思います。
でも実際にその一度が京アニさんで起こってしまったのです。
その後、2021年末にも大阪・北新地の雑居ビルで放火事件がありました。
毎日イメトレしていては疲れてしまい、とても続きません。
自分事に置き換えて、一度だけ『強烈なイメトレ』をすることが、日常の平和時に過度のストレスを持たず想定外に備える最善の策なのではないかと、振り返っています。