消防署査察(立入検査)の役割と重要性
消防署の査察(立入検査)とは、建物の火災予防対策が適切に行われているかを確認するための行為で、基本的には管轄の消防署が実施します。消防署の査察は、予防的な観点から火災リスクを低減するための重要な業務であり、火災の際に多くの人命を奪う可能性が高い施設や建物が査察の対象となることが多いです。
そのため、防火対象物点検の対象となる特定一階段等防火対象物や、飲食店や物販店、医療施設等が入居し、不特定多数の人々が出入りするビルやマンションが査察の主な対象となります。
ちなみに、特定一階段等防火対象物とは、基本的に地下または3階以上に特定用途のテナントがあり、避難階段が屋内に1箇所しかない建物を指します。このような建物で適切な防火管理が行われていないと、火災発生時に迅速な避難が難しくなり、多くの人の命が失われるリスクが高まります。
消防署の査察では、火災報知設備や消火設備等の適切な設置と管理、避難経路の確保、防火対策の施行状況などがチェックされます。
例えば、階段に私物が多く置かれているケースなど、避難経路が十分に確保されていない場合、管理権者や防火管理者に即座に撤去を求める行動を求められますが、消防署の署員が対象のテナントに直接注意をするケースもあります。
このようなテナントは基本的には素直に指導に従い、私物を撤去する行動を取るのですが、しばらくすると再び避難経路である廊下や階段等に私物を置くケースが散見されます。この場合、防火管理者は日常の防火管理業務の一環として巡回点検を続ける中で、残置されている私物に警告文を貼ったり口頭で注意をするなど、改善に向けた行動を取る必要があります。
また、査察の際に頻繁に指摘される点として「消防計画未届出」、「防火管理者の未選任」、「消防訓練の未実施」が挙げられます。
具体的には、建物の共用部に防火管理者が選任されている場合でも、各テナントには防火管理者が選任されていないことが多く、その結果、各テナントで必要な消防計画も作成されていないことがあります。
防火管理者の前任者が退職したり、休みが取れず防火管理者講習を受ける時間がない等の理由があるようですが、これらは未選任を許容する理由にはなりません。
当社が受託する物件で査察が入る際の対応
当社が防火管理者として外部委託を受けている物件に対し、消防署による査察が実施されることが決定した場合、消防署からは当社に査察立ち会いの依頼が来ます。査察の実施日には、開始時間の少なくとも30分前までに当社スタッフが現地に到着します。そして、防火管理の状態を確認し、入居しているテナントに対して査察が行われる旨の説明と防火管理上の注意喚起を行います。
消防署員が現地に到着し、挨拶が終わると、査察が開始される前にも関わらず、すでに用意された「改善(計画)報告書」が渡されることが多いことに気づきます。
この報告書には、改善が必要な事項が記載されています。例えば、一部テナントの防火管理者の未選任、防火対象物点検の未実施、消防設備等の点検結果報告書の未提出、共用部(階段や廊下等)の私物撤去が必要などの防火管理上の問題がすでにこの報告書に記載されています。そして、一般的には2週間以内に改善計画を立て、それを消防署に提出することが求められます。
このような事実から、必要な書類が消防署に提出されていない場合や、住人からの情報等により避難経路の確保が不十分であると消防署が認識している場合に、火災発生時の危険度が高い建物から優先的に査察が行われていると推測されます。
消防署の査察は厳しい指導を含むこともありますが、それら全ては建物利用者の人命と財産を守るために行われています。火災予防対策を日頃から怠らないようにし、日々の業務運営でも安全確保を最優先にすることが、結果的に企業の持続的な成長につながります。法令遵守は企業の社会的責任の一部であり、それを怠ると企業の信頼を一瞬で失うばかりか、事業活動にも大きな支障をきたします。
なお、査察で指導や是正が必要とされた場合には、迅速にそれを実行し、再度の違反がないようにすることが大切です。そして、違反が見つかったことをきっかけに、さらなる安全性向上の取り組みを進めるべきだと考えます。
防火管理者外部委託サービスを利用中のお客様には、消防署の査察対応は全て当社が責任を持って対応いたします。査察当日の対応や、指摘があった際の「改善(計画)報告書」の作成と提出も、管理権者(建物オーナー等)としっかりと連携して責任を持って実施します。
また、必要に応じて、消防署の担当者と「日常の防火管理」について、定期的に実施した「巡回防火点検報告書」や「消防訓練実施報告書」等を共有し、現状までの防火管理への取り組みや今後の取り組みを説明します。
全てはお客様の生命や財産を守るため、当社が当然の業務として行っていることです。どうぞ安心してお任せください。