マンションの防火管理者の「報酬」と「名義貸しのリスク」について

防火管理者の報酬
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マンションの防火管理者の報酬

武蔵小杉にマンションを購入して20年以上暮らしている友人は、そのマンションの防火管理者を有償で引き受けています。このように報酬を支払って住人の中から防火管理者を選任するマンションは少なくありません。
その報酬額は年3万円が一般的なようです。

報酬を支払って住人の中から防火管理者を選任することは妥当なことだと思います。
なぜなら、防火管理者には報酬に見合うだけの「重い責任」が伴うからです。

《防火管理者の責務》(消防法施行令第3条の2一部抜粋)

  1. 「防火管理に係る消防計画」の作成・届出を行うこと
  2. 消火、通報及び避難の訓練を実施すること
  3. 消防用設備等の点検・整備を行うこと
  4. 火気の使用又は取扱いに関する監督を行うこと
  5. 避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理を行うこと
  6. 収容人員の管理を行うこと
  7. その他防火管理上必要な業務を行うこと
  8. 必要に応じて管理権原者に指示を求め、誠実に職務を遂行すること

【出典】東京消防庁ホームページhttps://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/

これら防火管理者に必要とされる責務を果たさないまま、火災が発生して「防火管理上の問題」が原因で死傷者が出た場合、防火管理者および防火管理上の最高責任者である理事長(管理権原者)に刑事責任が問われる可能性が高いです。

2001年に発生し、44名の命が奪われた歌舞伎町ビル火災事件では、防火管理上の不備を問われたビルオーナーやテナント関係者に、執行猶予付きの有罪判決が下されました。

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防火管理者の責務を果たすための3つのポイント

東京消防庁のホームページに記されている防火管理者の責務は8項目ありますが、これらをまとめて、防火管理者としてやるべき業務には3つのポイントがあると考えます。

  1. 消防計画を作成して消防署に届け出る
  2. 定められた回数の消防訓練(消火・通報・避難)を実施して、報告書を消防署に届け出る
  3. 「日常の防火管理」を実施し、そのエビデンス(証跡)を残す
消防計画を作成して消防署へ届け出る
消防計画の作成・届出

消防計画は防火管理の基本であり、防火管理者が最初にやるべき業務といえます。管轄の消防署によって書式が異なりますが、基本的には穴埋め式で、必要とされる情報さえ集めてしまえば、消防計画作成の未経験者でも作成することはできます。
ただ、面倒な作業であることに間違いはないので、行政書士に依頼するという手段もあります。

消防訓練の実施

消防訓練が必要とされる回数は、建物の用途によって年1~2回以上と決められており、東京消防庁のホームページでは消防訓練の内容として【消火・通報・避難】訓練の実施が指定されています。
消火訓練に関しては、可能な限り訓練用の消火器を用意して、いざという時に住人が使えるようにしたいです。
この訓練用の消火器は実際の消火器(粉末消火器)より高価なため、購入が難しい場合は近くの消防署で借りられる可能性があります。

「日常の防火管理」の実施とエビデンス

日常の防火管理とは、定期的に現場(自身の住むマンションであれば、点検可能なすべての共用部)を訪れて、「防火に特化した点検」を行うことです。
具体的には次の3点に注意してください。

①消防用設備に異常はないか
防火管理者として可能な範囲で点検を実施しましょう。消火器であれば外観や内圧の点検、消火栓であれば扉の開閉が容易にできるか、表示灯がランプ切れを起こしていないか等です。
不備が認められた場合は、理事会に報告して交換や修理を依頼してください。

②火災の火元となるような異常はないか
例年火災の原因1位は「タバコ」であり、5位以内に「放火」が入ります。
これら火災の原因となりうる状態を放置しないようにしましょう。

例えば、燃えやすいゴミが放置してあったり、たばこの吸い殻が山積みになっているようなことがないように注意をします。このような状態を発見した場合は、持ち主がわかれば口頭注意や警告文等で啓蒙し、支障がない範囲で処分をします。

③避難経路は確保されているか
避難経路となる廊下や階段等に私物が置かれて避難の妨げとならないか注意をします。共用廊下に自転車を置くケースが散見されますが、自転車が倒れた場合、避難経路を塞ぐため危険です。

点検をする際は「真夜中に大震災に襲われ、火災が発生した」という場面を想定すると判断がつきやすくなります。
避難を必要とする方の中には足腰の悪い方や車いすを利用される方も含まれる可能性があります。そのため、最低でも1m以上は避難経路を確保できるようにしたいです。
このケースにおいても、持ち主に対して警告が必要となりますが、改善が見込まれない場合は最終手段として処分へ向けた行動をとってください。

「日常の防火管理」をしないと防火管理者としての務めは果たせない

これら「日常の防火管理」をどれだけ実施していても、放火に遭う可能性がゼロの建物は存在しません。
そのため、万一火災となっても防火管理に努めていた証拠を示すため、点検実施の都度「点検結果報告書」を作成することが重要となります。

この報告書を理事会に共有して防火管理に取り組み続けることが、いざというとき、防火管理者自らの身を守ることになります。

あなたが防火管理者を引き受けたということは、長時間にわたる防火管理者講習を受講したことに間違いはありません。そうであれば「防火管理者としての責任を果たさぬまま、人命に影響が出た場合の刑事(民事)責任のリスク」について十分認識しているはずです。

そのリスクを負う可能性を考えないまま、単なる「防火管理者の名義貸し」とならないよう注意をしてください。
また、管理権原者たる理事長がその状態を放置すると「防火管理の最高責任者として単なる名義貸しを容認していた」ということになり、防火管理者以上のリスクを負う可能性が高いことを忘れないようにお願いします。

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