防火管理者は複数の建物を兼任できるのか

無料ロゴ
関連資料を無料でダウンロードいただけます

防火管理者の複数兼任:手続き上の可能性と実務上のリスク

防火管理者外部委託サービスを説明する際に、よく受ける質問の一つに、「ひとりの防火管理者が複数の建物の防火管理者を兼任できるか」というものがあります。おそらく、この質問をされるお客様自身が、すでに複数物件の防火管理者を兼任しているのでしょう。

「複数兼任は可能か」という質問に対する答えは、「手続き上は可能」です。

しかしながら、兼任しているだけで、防火管理者としての業務が何も行われていない状態であれば、非常に大きなリスクを抱えることになります。兼任しているすべての物件について、防火管理者としての責務を果たせることを、消防署をはじめとするステークホルダー(あらゆる利害関係者)にしっかりと説明できる必要があります。

『スタッフが毎月現地に行って点検する』という、当社のビジネスモデルは、結局のところ「人件費」に大きな影響を与えます。多くの物件を受託できなければ、ビジネスとして成立させることは難しいでしょう。

そのため、防火管理者の外部委託サービスを開始する前に、「複数兼任が可能か」という問題について検討し、何件まで兼任が認められるのか、また複数兼任が認められるエリアの範囲について、各消防署にヒアリングを行いました。しかし、消防署の担当者に個別具体的な相談を持ちかけても明確な回答を得ることはできませんでした。どの消防署でも、回答は概ね一貫しており、

  • 日常の防火管理(防火点検)や消防訓練(消火・通報・避難)など、消防法に則った適切な防火管理を継続して行えないのであれば、複数の兼任は不可。
  • 万が一の際に防火管理者として現場に駆けつけたり、警察や消防からの調査・事情聴取に迅速に対応できないのであれば、複数の兼任は不可。

という内容でした。

この入念なヒアリング調査を通じて、「複数兼任が認められる条件」と「実際の防火管理の確実な履行」「火災時の迅速な対応」は、常にセットであることが明確になりました。

防火管理者は複数の建物で兼任できるのか?

防火管理者の責務とは

防火管理者の責務とは何でしょうか。東京消防庁のホームページには次の業務が明記されています。

《防火管理者の責務》(消防法施行令第3条の2一部抜粋)

  • 「防火管理に係る消防計画」の作成・届出を行うこと
  • 消火、通報及び避難の訓練を実施すること
  • 消防用設備等の点検・整備を行うこと
  • 火気の使用又は取扱いに関する監督を行うこと
  • 避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理を行うこと
  • 収容人員の管理を行うこと
  • その他防火管理上必要な業務を行うこと
  • 必要に応じて管理権原者に指示を求め、誠実に職務を遂行すること

参考:東京消防庁 防火管理者とは https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jissen/p03.html

この中でも特に、

  • 消防用設備等の点検・整備
  • 火気の使用又は取扱いに関する監督
  • 避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理

については、現地に行かずして業務を遂行することはできません。
そのため、当社ではこれらの現地での点検業務を『日常の防火管理』と定義し、これを確実に履行するためには次の3つの条件が必要であると結論付けています。

  1. 定期的に現地を訪問し、防火点検を実施すること。
  2. 防火管理上の問題が発見された場合、迅速に対応すること(対象者への注意喚起、対象物への警告文の掲示、管理権原者への報告と改善の促進など)。
  3. 防火管理に関わる行動記録を保持し、必要な際に『日常の防火管理を適切に履行していた』ことを証明できるようにすること。

防火管理者の兼任が抱えるリスク

『日常の防火管理』や『火災時の迅速な対応』の重要性を正しく理解せず、安易に防火管理者の兼任を引き受けている建物オーナー、不動産管理会社、複数のテナントを運営する企業の従業員などがいます。しかし、実際の業務を伴わない複数兼任(単なる名義貸し)は、『非常に高いリスクを抱える』といわざるを得ません。

どんなに注意していても、放火のリスクがゼロである建物は存在しません。万が一、火災が発生して死傷者が出た場合、『日常の防火管理』や『迅速な対応』が適切に行われ、またその証拠が残されていなければ、刑事訴訟の対象となる可能性があります。特に重要なのは、刑事訴訟のリスクは防火管理者だけでなく、管理権原者(建物や店舗オーナーなど)にも確実に及ぶという点です。

防火管理者としての責務を果たせないまま複数の物件を兼任することは、防火管理者自身がリスクを負うだけでなく、建物オーナーにとっても大きな問題となります。もし建物オーナーが「防火管理者の名義を借りて、消防署に選任届や消防計画を提出すればそれでよい」と考えていた場合、万が一火災事故が発生した際、最も大きな法的リスクを負うのは『名義貸し防火管理者』ではなく、それを利用した建物オーナー自身であることを忘れてはなりません。

複数兼任を引き受ける際の条件

防火管理者は、『日常の防火管理(防火点検や消防訓練など)』と『火災時の迅速な対応』が常に可能であり、その履行記録を正確に残せる体制が整っている場合にのみ、複数の建物を兼任すべきです。引き受けたすべての建物で、この前提条件を満たすことが不可欠です。

防火管理者の使命は、建物利用者を『火災発生のリスク』から守ること、そして万が一火災事故が発生した場合には、建物オーナーを『法的リスク』から守ることです。

当社は、徹底したヒアリングと東京消防庁OBの助言に基づき、複数の建物を兼務するための準備とノウハウを整えています。防火管理者の『安易な』複数兼任には、十分にご注意ください。

シェア:
Facebook
Twitter
LinkedIn

こちらの記事もおすすめ

お問い合わせ

当社の防火管理者外部委託サービスにご興味がありましたら、
まずはお気軽にご相談ください

無料相談&お問い合わせ
お電話でのお問い合わせ
携帯からは
03-6416-5197
月〜金(土日祝定休)10時〜17時
防火管理者外部委託サービス
紹介資料
サービス毎の具体的な費用を
知りたい方はこちら
サービス毎の具体的な費用を
知りたい方はこちら
さらに詳しく知りたい方へ

防火管理者外部委託サービスの導入に関して
気になるポイントを詳しく解説します