2つのビル 登記上は「隣人」でも消防法では「夫婦」!?

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マンション管理組合から悩ましいご依頼が


3月のある日、東京都の区部にあるAマンション管理組合様から、「防火管理者」と「統括防火管理者」の外部委託のご依頼を頂きました。消防署から選任届の提出の督促があったことがきっかけです。

ただし、とっても悩ましい相談とセットでした。
それは

「うちのマンションの隣にあるビルとが、消防法上は『一つの建物』扱いとなっていて不都合があるため、この機会に『別々の建物』になり、それぞれが消防設備や防火管理が運用できるにしたい」とのことでした。

よくよく聞いてみると「Aマンション」の隣に「Tビル」があり、なんと両方の建物で自動火災報知設備を共有しており、ベルも連動している、とのことでした。
そして、Tビル側の発報したベルを止めるためには、一度Tビルを出て、隣のAマンションの管理事務室に設置された自動火災報知機を扱わなければならない、という状況でした。
これを切り離せないか?つまり、Aマンションの消防設備とTビルの設備とを分離して、別々に運用・管理したい、というご要望でした。

何やら難しそうな案件ですが、とにかく相談に乗らせて頂くことに。

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まずは現場調査、、、なるほど

現地へ行くと、確かにAマンションとTビルとは、ビルの隙間が金属板(エキスパンションジョイント)で完全に接合されています。消防法上「一つの建物」扱いのようです。

一方で、各階の外廊下の壁は天井まで覆われ、完全にお互いの建物が分離されていました。各階とも建物間の通り抜けができるところは全くありません。実質的には「別の建物」です。

なぜこのような状態になっているのだろう?

消防署へ相談に

管轄の消防署へ相談に行きました。
すると「もしこの建物を消防法上2つに分けるには、エキスパンションジョイントを切断する必要があるであろう」
切断の仕方は区役所の建築指導係に確認が必要、とのことでした。
切断ができないなら、隣り合うビルであっても2つに分けることができない。消防設備も共有したままだし、二棟の建物を統括する統括防火管理者を出して欲しい、とのことでした。

当社の一級建築士に写真を見せて相談したものの、エキスパンションジョイント切断することは莫大なお金がかかるだろう、との回答。
難しい!

区の建築指導係に相談

建築指導係へ相談に行くと、AマンションとTビルは、昭和の時代に「増築」の建築確認が申請され、受理されていることがわかりました。

なるほど、「増築」したのか!
建築基準法上「一つ」になったのですね!
消防法上も「一つの建物(防火対象物)」として認識していたのですね。

建築指導課からは「一旦増築されたものを今となって分離することはできません」とご指摘をいただきました。
2つに分離するとそれぞれが違法建築物になるのですね。
逆を言えば、当時の建物所有者は違法建築扱いにならないよう「増築」扱いで届出をだして建物を建てたのでしょう。

さて、、、結局、2つの建物を消防法上2つに分ける事はできないことがわかりました。
2つの建物は仲良く消防設備を融通し、防火管理も一本化する必要があります。

ここまで調査したところをまとめて、Aマンション管理組合の理事会を開催してもらい説明しました。
理事会には、管理組合理事長、管理会社、そして統括防火管理者候補としての私(こづっき)が集まって協議した結果、

◯消防設備を分けることは諦める
◯防火管理を一本化する(つまり統括防火管理者を当社が受託する)ために、隣のTビルのオーナーへ、当社が二棟の建物(いや消防法上は一つの建物)の統括防火管理者になることの同意を得る

という方向でまとまり、Tビルのオーナーへお願いに上がることとなりました。

二棟の建物に求められているのは「一つの建物」としての統括防火管理者の選任です。

なお、個々の建物の防火管理者はそれぞれが単独で選任しても良いし、消防計画もそれぞれの建物で作成して欲しい、とのことでしたので、まずはAマンション管理組合の防火管理者を当社が受託し、消防計画も作り、消防署へ届出を行いました。

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両オーナー併記による統括防火管理者の選任に

統括防火管理者は、Aマンション管理組合とTビル、それぞれの防火管理者の互選により選任する必要がありました。
Aマンション管理組合の防火管理者は上述の通り当社となりましたので、あとはTビルのオーナーの互選(同意)次第です。
AマンションとTビルは長い間折り合いが良くなかったようですが、TビルがOKしてくれないと不完全な防火管理の体制となってしまいます。Tビルのオーナーになんとか事情を理解していただき、当社が統括防火管理者になることを承認していただきました。

ここに、ようやく当社が統括防火管理者に選任されることに。
統括防火管理者選任届の「申請者(=管理者)名」に、「Aマンション管理組合理事長」と「Tビル社長」を併記し、協議書やTビルのテナント情報・平面図等を添付するなど、かなりイレギュラーな書面を作り上げて、ようやく消防署に届出を行い、受理していただきました。Aマンションの皆さんから喜んでいただきました。

そして、ありがたいことに、消防署の担当官からも、ねぎらいのお言葉を頂きました。
恐らく消防署も不完全な防火管理の体制に困っていたのだと思います。

とても貴重な経験をさせていただきました。

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