管理会社からこんな質問がありました
神奈川県内の賃貸マンションやビルの建物管理会社から、3棟まとめて委託したい、とのお問い合わせがありました。
見積書を出した後、次の質問を頂きます。
「もし御社に防火管理者を委託した物件で火災が発生した場合、御社ではどのような補償をしてくれるのですか?」
管理会社の担当者に質問の意図を尋ねたところ
「管理会社として防火管理者のアウトソーシングを建物オーナーへ提案するのに、オーナーと自社のリスク回避のために御社で保険に入っているなどの補償があれば、先に進めやすい」
とのことです。
当社へ防火管理者を委託するメリットって、なんだろう
整理してみましょう。
そもそも、私たちプロ防火管理者が法令に則り業務を履行し続けることで、火災を「減らす」ことはできますが、火災を「ゼロにする」ことは不可能です。
お部屋の中で失火したり、放火されたり、近隣で大規模火災があって延焼するようなことがあれば、消防署であっても防ぎようがありません。
クライアントの目線で考えると、当社へ防火管理者を委託するメリットは、
- 消防法違反を回避することができる(防火管理者不在・消防訓練未実施の解消など)
- 火災リスクや火災による人身被害リスクを減らすことができる(日常点検や消防訓練等による居住者への意識付けや、避難経路の確保・消防設備の不備の指摘など)
- 実際に火災事故が発生した時に、管理者(建物オーナー)や管理会社が1.に基づく法的責任や、1.の防火管理を怠ったことに起因する法的責任(刑事罰)リスクを回避する可能性が高くなる
です。
つまり、当社が目指す「防火管理者の外部委託」とは、
- 人に対するリスクを減らし、
- 法律上の責任を負わないように予防する
サービスなのです。
火災事故で建物が消失したら補償はしてくれないの?
管理会社の担当者は「補償」という言葉を使っていました。
補償=金銭と考えると、
防火管理者が何かしらの金銭補償をしてくれるの?
という発想になるのだと思います。
冷静に考えてみますと、火災事故の結果、発生する経済的なリスク(例:放火で建物が全焼・半焼した)ついては、建物オーナーが自ら火災保険に加入して身を守ることになります。
防火管理者が業務不履行したらどう補償してくれるの?
次に、クライアント目線からすると、
「万が一当社が防火管理者としての業務を怠ったら、どういうリスクが発生するの?」
「どう責任を取ってくれるの?」
ということが考えられます。
この場合、防火管理者による業務不履行だけで管理者(建物オーナー)が即責任を問われる訳ではありません。
防火管理者が業務不履行の状態で火災事故が発生したら、防火管理者自らに責任が発生する一方で、管理者(建物オーナー)にもリスクが発生します。
防火管理者にきちんと防火管理業務を行なわせていなかった=防火体制がなっていない=結果的に「名義貸し状態」だったから被害が拡大した可能性があるのではないか?
つまり、
防火管理者が業務不履行の状態で火災事故が発生したら、防火管理者以上に「そんな防火管理者を選任した結果、火災被害を拡大させた建物管理者」に大きな法的責任が及んでしまうのです。
ダメ防火管理者は即刻首を切り、常に法令遵守状態を
防火管理者が必要な業務を怠っているかどうかは、例えば当社の場合は「一ヶ月」で判断できます。
つまり、
・当社がお約束している日常点検が行なわれていない(月次報告書が送られてこない)
ということがトリガーとなります。
日常点検が履行されていない=防火管理業務が滞ってしまっている状態
ということになります。
当社が防火管理者としての業務を履行していないことが判明した場合、即刻当社の首を切って(契約を解除して)、新しい防火管理者を立てて業務を実施させれば、管理者に発生したリスクがなくなります。
もちろんそのようなことのないように、万全の体制で(ココは企業秘密ですが)防火管理業務に当たっていますのでありえませんが、理屈はそういうことです。
まとめると、
- 防火管理者を委託する意味は、法令遵守(法的責任の回避)と予防的な活動により実際の火災リスクや人身被害リスクを減らすこと
- 火災が起こった時の経済的リスクは防火管理者が追うのではなく、建物オーナーが火災保険に入り守るもの
- 防火管理者が業務不履行で火災事故が起こると建物オーナーにも法的リスクが及ぶので、法令遵守する防火管理者へ速やかにスイッチすべき
ということになります。
もちろん「防火管理者が未選任だ」「名義貸しで選任しているが何もやっていない」は論外です。
一日も早く適切な業務を遂行する防火管理者を選任してください。