複数の建物の防火管理者を1名が兼務することは、条件さえクリアすれば法律上は可能ですが、「名義貸し」「実態のない(防火管理をしていない)兼務」は違法です。
※過去ブログ「防火管理者の複数兼任は可能か?」(2015年5月1日)
「消防署へ兼務の報告をして、ちゃんと届出が受理されましたよ」
そうです。消防署は手続き主義に則り、形式的には届出を受理することがありますが、受理した=適法であると認めた、、、わけではないのです。届出が済んだ段階で「リスクを引き受けてしまった」ことに気づきません。
防火管理者の兼務は手続き上は難しくないが、、、
届出そのものは有効です。消防署が違法な受理をすることはありません。
問題は、後日に消防署が建物へ査察(抜き打ちの立ち入り)を行った場合や、火災事故が発生し現場検証やヒアリングが入った際に、防火管理者が複数の建物の防火管理を兼務していたが、実態がなかった(日常の点検や消防訓練、統括防火管理者の場合はテナント等への指示等を行っていない)ことが判明した場合、防火管理者の名義貸しとみなされ、最悪の場合にレッドカードが下されます。上述の「リスク」は、このことを指しています。
違法な防火管理は刑事罰の対象です
レッドカード=刑事罰が下される、ということです。
そして、この刑事罰は、防火管理者を兼務した本人だけでなく、この防火管理者を実質的に名義貸し状態で活用した建物オーナーが負います。(罪は管理者である建物オーナーのほうが重い)
このことは過去の火災事故における判例から明らかです。
兼務する防火管理者や選任する建物オーナーが気をつけるべきこと
名義貸しした人も、名義借りした建物オーナーも、いざ訴えられてから「知らなかった」では済まされません。
兼務する防火管理者や防火管理者を選任する建物オーナーは、コトが起こっても(火災リスクをお0にすることはできないが)0に近づけるための普段からの取り組みを継続して行ってきたことを立証できるようにしておくことを、自分だけでなく建物オーナーをリスクから守るためにしてください。
安易に引き受けるも、安易に選任するのも、お互いにとって「リスク」です。
そして、リスクが見えていないのが最大のリスクです。