都内で拡大するマンション空き家問題と防火管理の危機

都内空家の現実
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マンションにも広がる ― 都内「空き家90万戸時代」の実態と防火・管理への警鐘

多くの人にとって「空き家問題=郊外や山間部の話」というイメージが根強くあります。しかし最新の統計を見ると、空き家問題はむしろ住戸数が集中する都心で深刻化している可能性があることがわかります。

東京都が公表した住宅・土地統計調査によれば、都内の空き家戸数は約90万戸、空き家率は10%強とされ、住宅のおよそ10軒に1軒が「空き家」である状況が示されています。

これは2023年時点の統計であり、その後の住宅総数の増加や過去の空き家増加率を踏まえると、2025年現在、空き家戸数が100万戸を超えている可能性も考えられます。空き家問題は“現状維持”ではなく、今もなお進行している課題です。

《出典》総務省統計局「住宅・土地統計調査」
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.html

東京都の統計では、空き家はまず「賃貸用」「売却用」「別荘(セカンドハウス)」といった市場に流通している空き家と、長期不在や相続放置など利用されていない空き家に区分されています。

このうち、賃貸募集や売却に出されていない「その他の空き家」は20万戸以上と報告されており、その中には所有者不明や管理不全、長期不在の住戸などが含まれると考えられます。一般に社会問題として扱われる“住まわれていない空き家”とは、この「その他空き家」を指すと言ってよいでしょう。

「その他空き家」の詳細な内訳は統計上明示されていないようです。ただし東京都では、集合住宅の割合が全国的に見ても極めて高く、賃貸アパートや分譲マンションなどの共同住宅が住宅ストックの多数を占めています。そのため、「その他空き家」の中にはマンションの空き住戸が相当数含まれている可能性が高いと考えられます。

つまり「空き家=古い木造戸建て」という従来のイメージだけでは、都心部の空き家問題は説明できず、“マンションの空き住戸=空き家”という視点で捉える必要があるということです。

こうした状況下で、マンションの空き住戸が放置されると、単なる“空室”にとどまらず、管理組合の運営基盤、建物の資産価値、住民の安全安心、防火・防災体制、さらには地域からの信頼といった多層的なリスクへ発展する懸念があります。

本稿では、なぜ都内で空き住戸が増えているのか、その背景と具体的な影響、そしてマンション管理組合や防火管理担当者が取るべき備えについて整理していきます。

都内で空き家が増え続ける理由 ― マンションにも空き住戸が広がる背景

東京都ではここ数十年にわたって新築の供給が続き、その結果、都内に存在する住宅の総数(=住宅ストック)は大きく伸びてきました。

最新の統計(2023年10月1日時点)では、東京都の総住宅数は約 820.1 万戸で、2018年の調査から約 52.98 万戸(6.9%)の増加となっています。

《出典》東京統計ポータル「結果の概要」
https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/jyutaku/2023/jt23tgaiyou.pdf?utm_source=chatgpt.com

一方で、この“増えた住宅”すべてに人が住んでいるわけではありません。人口構造の変化やライフスタイルの多様化、相続放置による不在などにより、「使われていない住宅」も同時に増えています。その結果、同じ期間で空き家数も増加し、前述の通り、2023年時点では約90万戸に達しました。

つまり東京都では、供給は増えている一方で、居住実態が追いつかない(人は増えない/住まない)というギャップが生まれ、その差分として“空き家”が積み上がっているといえそうです。

こうした傾向が生まれた主な理由として挙げられるのは、高齢化と人口構造の変化、相続後の管理放置、転勤・転居による長期不在、投資目的で購入された住戸の未利用、既存マンションの築年数経過による魅力の低下など、複数の要因が複雑に絡み合っていることです。結果として、かつては居住されていた分譲マンションの区分所有住戸が、マンションの空き住戸としてそのまま放置されるケースが都内で増えていると考えられます。

また、処分しようとしても、相続人が複数存在し意思決定が進まない、過去の登記が整理されておらず所有者が特定できない、権利関係が複雑に残っているといった理由から売却や賃貸への移行が進まない住戸も見られます。結果として「使われていないのに処分できない住宅」が増え、それが空き住戸の増加をさらに押し上げているといえます。

「使われていないのに処分できない住宅」が増え、それが空き住戸の増加をさらに押し上げているといえます。

マンションの空き住戸が抱える具体的リスク― 管理費・資産価値・防災・防火の観点から

まず、マンションの空き住戸があることで、管理費や修繕積立金の徴収体制に大きな穴が生じかねません。所有者不明や連絡不能となった住戸があると、毎月の管理費を確実に徴収できず、将来的な大規模修繕や定期メンテナンスの原資が不足する可能性が高まります。

特に、建築資材や修繕工事費の高騰が続く現在では、わずか数戸の未納でもマンション全体のキャッシュフローを圧迫し、それが共用部の維持や設備更新、防火設備の点検といった必須の管理業務を後回しにしてしまうケースが想定されます。建物全体の劣化が進行すれば、住環境と資産価値の両面で致命的な影響を受けかねません。

さらに、防火・防災の観点でも、空き住戸の存在は「見えないリスクの温床」となります。一見すると、人が住んでいない住戸は火気利用がなく安全に思えるかもしれません。しかし、人が常に出入りする住戸には「異常に気づく目」と「小さなトラブルを早く処置する機会」があります。反対に、空き住戸では小さな異常が放置され、出火が発生しても誰にも気づかれないまま延焼するという、別の形のリスクが高まるのです。

空き住戸が多く、所有者の所在が把握できなかったり、管理組合による名簿管理が不十分だったりすると、消防設備点検などの法定点検が対象住戸で実施できない状況が生じます。室内確認ができないため、漏電や劣化した配線、放置されたごみ、また場合によっては不審者の侵入や放火などの不正利用が長期間見過ごされる可能性があります。

こうした「管理が届かない状態」が積み重なることで、人が住んでいないにもかかわらず、防火上はむしろ深刻なリスクが潜んでいると考えられます。

また、空き住戸が多いことで資金不足に陥り、共用部の管理が行き届かないマンションは、将来的な売却や賃貸募集の際に「敬遠される物件」「管理不全のマンション」という印象を持たれやすく、資産価値の低下や市場での流動性の喪失につながる可能性があります。

不動産価値を維持し、管理体制への信頼を高めるためには、空き住戸への早期対応と、状況を適切に把握できる透明性のある管理体制を整えておくことが、安心につながります。

私たちに求められる対応― 管理組合・防火管理・住民の視点から

では、こうした状況にあるマンションでは、どのような対策が求められるのでしょうか。

まず第一に必要なのは、現状の正確な把握です。所有者名簿の整理や連絡先の確認、住戸の居住実態調査を継続して行い、長期間不在の住戸や所在不明の住戸を早期に洗い出す必要があります。特に、相続後に未登記のまま放置されている住戸は、“幽霊住戸”として管理から漏れている可能性があり、早い段階で状況を把握することが重要です。

次に求められるのは、防火管理体制の再整備です。マンション全体が防火対象物に該当する場合には、まず防火管理者を選任し、消防計画の作成と消防署への届け出、消防訓練の実施、そして定期的な防火点検を確実に履行する必要があります。

その際、防火管理者は、空き住戸の周囲のみならず共用部分や避難経路、防火設備、ごみ置き場などを含め、建物全体の状態を継続的に巡回・確認し、異常があれば速やかに対応できるよう「記録」と「報告」の体制を整える役割を担います。空き住戸の存在があっても、防火管理者が中心となって「管理されている状態」を維持することが、住民全体の安全につながります。

また、可能であれば、空き住戸を放置せず、活用や処分を検討することも重要です。所有者と連絡が取れる場合は、売却や賃貸、除却、管理代行の導入など、放置状態を解消する方針を早期に見出すことが望ましいでしょう。特に、所有者不明や管理が極めて困難な場合には、弁護士など専門家の力を借り、行政による支援制度の活用を検討することも有効と考えられます。

そして最後に、マンション全体の長期修繕計画を見直し、管理費や修繕積立金の徴収体制を整えることで、空き住戸の増加による資金不足に備える必要があります。特に、未納リスクを織り込んだ運営予算を設ける、滞納発生時の回収手続きをルール化する、負担が偏らないよう会計を透明化するなど、具体的な運営方針を整えることで、将来的な修繕費の不足や建物劣化のリスクに備えることができます。

こうした取組みを継続するには、専門的な知識と運営経験が求められます。マンション管理組合の運営について課題を抱えている場合は、マンション管理士など専門家の活用も有効です。また、理事長のなり手が不足している場合には、当社が提供する「メルのプロ理事長」サービスをご利用いただくことで、管理組合運営の負担軽減や体制整備を図ることができます。

結びに ― 空き住戸は“他人事”ではない。管理組合と住民の総意で取り組むべき課題

空き家問題は、「地方」「戸建」「過疎地」の話として扱われる傾向にあります。しかし最新データが示すのは、「都心で、マンションで――空き家は確実に増えている」という現実です。

投資の過熱などから都内のマンション販売価格は新築・中古に関わらず高騰を続けており、23区では平均価格が1億円を超えるなど、一般的な家庭では到底手の届かない状況です。しかしその一方で、100万戸にも及ぶと推計される空き家ストックが存在し、その中にはマンションの空き住戸も相当数含まれていると考えられます。

そして、このマンション空き住戸の放置は、管理費・修繕積立金の滞納、建物の維持管理の空洞化、防火・防災体制の形骸化、さらには資産価値の毀損、地域・住民全体の安全安心にまで影響を及ぼす――極めて重いリスクです。

だからこそ、管理組合、理事会、防火管理者、そして住民一人ひとりが現実を直視し、早期の現状把握や定期巡回、防火・防災点検、そして空き住戸の処分や活用を含む総合的な対策を講じる必要があります。マンションには廊下や階段、配管などの共用部が存在し、これは住民全員で管理する共通の資産です。共同住宅である以上、住戸単体の問題は“建物全体の問題”に直結します。

そして終の棲家とするには、この共通の資産をいかに守り、次の世代へ引き継ぐかを住民全員が考え、意志を共有することが欠かせません。空き住戸問題は、特定の誰かが抱える負担ではなく、管理組合と住民の総意によって取り組むべき課題です。

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