命の危機から学んだ、日常に潜むリスクの存在
防火管理者のこづっきです。
20年ほど前、サーフィンを楽しむためにバリ島へ行った際、恐ろしい体験をしました。
「離岸流」という言葉をご存じでしょうか? これは、海岸に打ち寄せた波が戻る際、特定の場所で強く沖へと流れる現象のことです。サーファーの間では、低気圧などの影響で波が乱れた後に発生する強い潮の流れ(カレントと呼ばれます)には注意しなければならないというのが常識です。しかし、バリ島で体験した離岸流は、私が知っていた常識をはるかに超えるものでした。
離岸流に巻き込まれた瞬間、まるでラフティングで激流に挑むかのように、あっという間に数百メートルも沖に流されてしまいました(実際はそこまで流されていなかったかもしれませんが、恐怖で岸がはるか遠くに感じました)。私は必死に岸を目指してパドリングを繰り返しましたが、体力が奪われるだけで、逆に岸はどんどん遠ざかっていきます…。このまま知らない国で漂流し、サメかシャチにでも襲われるのだろうという絶望感が募る中、ふと数年前に見たテレビ番組を思い出しました。
その番組では、浅瀬で潮干狩りをしていた大人が離岸流に気づかぬうちに沖に流され、泳ぎが得意であっても溺れてしまうという内容でした。しかし、離岸流の幅はせいぜい数十メートルで、無理に岸に戻ろうとせず、流れに対して横に進むのが正しい対処法だということを思い出したのです。
一緒に流されていたオーストラリア人の若者にもジェスチャーで「横に進め!」と伝え、なんとか無事に岸へ戻ることができました。若者はとても感謝してくれました。
この経験を通じて感じたのは、サーフィンをしていれば海でのリスクがあるように、私たちが火や電気を使って生活する中では、常に火災のリスクがあるということです。しかし、日常生活の中で「火災が起きたらどう行動すべきか」を意識している人は少ないでしょう。
そのリスクを避けるために重要なのは、初期消火や安全な避難、そして消防機関への迅速かつ正確な通報に関する知識と経験です。火災に遭遇することは稀かもしれませんが、消防訓練に参加することで、これらに必要な知識や経験を身につけ、いざという時に冷静に対処する力を養うことができます。職場や学校で行われる消防訓練に対して、「面倒だな」と思う方もいるかもしれません。しかし、その訓練が、緊急時に自分の命や周囲の命を守ることにつながるのです。
一方で、消防訓練の実施が義務付けられているにもかかわらず、未実施の建物が多いのも現実です。実際に、私が住んでいるマンションは1階に店舗があり、年に2回以上の消防訓練が義務付けられているはずですが、その案内を一度も見たことがありません。マンションには2人以上で操作が必要な屋内消火栓と粉末消火器が設置されていますが、私が不在の際に火災が発生した場合、果たして住人の誰かがこれらを使用できるのか疑問です。
消防訓練の実施は法律で定められており、もし訓練を怠ったまま火災が発生すれば、防火管理上の最高責任者である管理権原者(建物オーナー等)が刑事責任を問われる可能性もあります。詳しくは「消防訓練を実施しない場合のリスク」というコラムをご覧ください。
当社の防火管理者外部委託サービスをご利用いただければ、必要な消防訓練を毎年確実に実施いたしますので、ご安心ください。また、消防訓練実施以外の防火管理者業務をすべて実施しているお客様向けに、消防訓練をサポートするサービスも提供しております。
どうぞお気軽にお問い合わせください。