消防査察(立入検査)に必要な事前準備とは
防火管理者のこづっきです。
神奈川県のオフィスビルに入居する会員制シェアオフィスの消防査察(立入検査)の立ち会いに参りました。
消防査察(以下、「査察」という。)とは、消防署が建物や施設を定期的に検査し、消防法令に基づく防火・防災対策が適切に実施されているかを確認する活動です。具体的には、以下のような点検が含まれます。
- 防火管理体制の確認:管理権原者および防火(防災)管理者の届出状況や届出内容が現状と一致しているかを確認。
- 消防訓練の実施状況:消防訓練が定期的に実施され、その記録が保持されているかを確認。
- 避難経路の確保:避難通路や非常口が確保され、適切に標示されているかを確認。
- 消火設備の点検:消火器、スプリンクラー、消火栓などの消火設備が正しく設置され、機能しているかをチェック。
- 建物の構造確認:防火戸などの建物の防火構造が適切に維持されているかを検査。
- 火気使用場所の確認:火気を使用する場所や設備が安全に管理されているかを確認。
査察は火災予防のために重要な役割を果たしており、企業や施設が安全な環境を維持するために不可欠なプロセスです。コロナ禍においては感染予防の観点から査察が控えられていましたが、現在では全国的に積極的に実施されています。
査察実施の際には、管轄する消防署の担当部署から事前に連絡が入り、日程調整の上で、防火対象物の防火管理上の責任者が立ち会う必要があります。当社が防火管理者を受託している物件については、この査察の立ち会いを当社が責任をもって対応しますのでご安心ください。
話をシェアオフィスの査察に戻します。入居している建物は巨大なオフィスビルでしたが、消防署の担当者は1名のみでした。フロアごとに担当が分かれているのかもしれません。
最初に挨拶を交わし、管理権原者と防火管理者に変更がないかを確認した後、シェアオフィス内を案内しました。シェアオフィスでは当社が月1回実施する巡回防火点検に加え、清掃担当者が毎日入室し、その際に避難経路や消防設備の確認といった防火管理上の必要なチェックも実施しているため、整理整頓が徹底されていることもあり、査察はとてもスムーズに進みました。途中、査察担当者の質問に対して、無人のシェアオフィスのため社員が常駐していないことや固定電話がないことを伝えると、「あぁ、なるほど」と何かを納得している様子でした。その後、管理状況に全く問題がない旨を告げられ、今回の査察は10分程度で完了しました。
査察への立ち会いでは、査察担当者の様々な質問に即座に回答することが非常に重要です。防火管理上の責任者または代理として立ち会っているにもかかわらず、これらの質問に答えられないと、防火管理が十分に行われているかどうか疑われ、査察担当者や管轄する消防署に対する印象が悪くなる可能性があります。そのため、消防署に届出している消防計画や防火管理者の選任届などの書類、日常の防火管理の証拠として作成している巡回防火点検の報告書などをファイリングして持参することが必要です。私の場合、この資料に付箋を貼り、どのような質問にも即座に答えられるように入念に準備しました(実際には、付箋を貼ってくれたのは本社の優秀なスタッフでしたが…)。
最近、大阪エリアでの査察が増えているように感じます。これは、来年の万博開催を控え、国内外から多くの人が集まることを見越して、重大な火災事故を未然に防ぐための取り組みかもしれません。もちろん、首都圏でも商業ビルや雑居ビルを中心に、頻繁に査察が実施されています。
この査察では、防火管理者を選任していなかったり、必要とされる防火管理上の業務を実施していないビルやテナントには必ず改善が求められます。査察がまだ実施されていないからといって、指導されてから対処すればいいと考えるのは大きな誤りです。適切な防火管理がされていない状態で火災事故が発生した場合のリスクを考慮しなければなりません。防火管理者の選任や必要な業務の遂行が難しい場合は、ぜひ当社にご相談ください。