「消防計画作成代行」と「消防訓練サポート」への申込が増えています
「消防計画作成代行」と「消防訓練サポート」という、防火管理者業務の一部を支援するサービスを提供しています。昨年の価格改定による値下げの影響もあり、このサービスへの申し込みが増加しています。心より感謝申し上げます。
新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行した後、消防査察(立入検査)の実施回数が増加し、それに伴い、当社の防火管理者外部委託サービス業務の一環として、消防査察への立ち会い機会も増えました。当社が防火管理者として選任されている防火対象物では、消防計画や消防訓練の不備による選任期間中の指摘はありません。しかし、消防計画作成代行と消防訓練サポートへのお問い合わせをいただくお客様の中には、消防査察で不備を指摘され、早急に対応が必要とされている方が多くいらっしゃいます。
防火対象物の管理権原者(建物オーナー等、防火管理上の最高責任者)が、当社のような防火管理の専門家ではなく、居住者や従業員から防火管理者を選任する場合、その防火管理者が責務を果たすことは容易ではありません。防火管理者の資格講習では、消防計画の作成方法や消防訓練の実施方法を具体的に学ぶことはできず、ノウハウや経験がない方がそれらを実施するためには、相応の努力と時間が必要となります。さらに、防火管理者が対応すべき業務はこれらだけに留まらないため、多忙な仕事や私生活に追われながら防火管理業務を完璧にこなすことは難しいと考えます。
しかし、防火管理者には「防火対象物の利用者の生命や財産を火災から守る」という重大な責任が伴います。「忙しくてできなかった」という理由は受け入れられません。管理権原者や防火管理者がその責務を果たさず、防火管理の不手際が火災事故を引き起こした場合、両者は刑事責任を問われる可能性があり、この事実を決して忘れてはいけません。
防火管理者の責務とは
防火管理業務を推進する責任者として選任された防火管理者の責任は重大であり、単に選任届を消防署に提出するだけで終わるわけではありません。防火管理者の具体的な責務は以下の通りです。
《防火管理者の責務》(消防法施行令第3条の2一部抜粋)
- 「防火管理に係る消防計画」の作成・届出
- 消火、通報及び避難の訓練を実施
- 消防用設備等の点検・整備
- 火気の使用又は取扱いに関する監督
- 避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理
- 収容人員の管理
- その他防火管理上必要な業務
- 必要に応じて管理権原者に指示を求め、誠実に職務を遂行する
《出典》東京消防庁「防火管理者とは」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jissen/p03.html
このように、防火管理者の責務は、法令で詳細に定められており、その中でも特に重要視されているのが、「消防計画の作成・届出」と「消防訓練の実施」です。これらは防火管理者の責務の中で最も基本となる項目であり、東京消防庁のホームページで、防火管理者の責務として1番目と2番目に明記されていることからも、その重要性がうかがえます。消防計画は、防火管理業務を適切に実施するための基本的な指針であり、この計画に基づいて日々の防火管理が行われます。そのため、実際の建物の用途や特性に合った消防計画を策定し、消防署への届出を行うことは、防火管理者にとって非常に重要なプロセスです。
消防計画の内容には、防火対策の具体的な方法や、緊急時の対応策、避難経路の確保といった要素が含まれます。これらの計画を事前に消防署に提出し、内容が承認されることで、初めて防火管理業務の実施が可能となります。承認された消防計画に基づき、防火管理者は日々の業務を遂行し、定期的な見直しを通じて計画の適切性を保ち続ける必要があります。
また、消防訓練の実施も防火管理者の責務の中で非常に重要で、法令で定められた回数以上の消防訓練を毎年実施する必要があります。この訓練を通じて、居住者や従業員に正しい避難方法や消火器の使用方法を教育し、実際の火災発生時における被害の最小化を図ることができます。
消防訓練は、ただ形式的に実施するのではなく、参加者が実際の状況を想定して積極的に参加できるような内容であることが求められます。防火管理者は、訓練の計画、実施の各段階で主導的な役割を果たすことが必要であり、これによって防火対象物全体の安全性が高まります。
消防計画や消防訓練の実施のみで充分と考えるお客様にサービスは提供しません
「消防計画作成代行」と「消防訓練サポート」という2つのサービスは、お客様が防火管理者の責務を自身で果たしていることを前提として、防火管理者が行うべき業務の一部をサポートするものです。防火管理者の責務には、定期的に現地へ出向いて防火管理に特化した点検を実施しなければならない業務が含まれます。そのため、当サービスを利用しても、防火管理者に求められる全ての業務がカバーされるわけではなく、結果として管理権原者のリスクは依然として残ることになります。このリスクの一例として、防火管理者が防火管理業務を実施しなかった場合、管理権原者には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性が消防法に定められています。
■関連条文■
- 消防長又は消防署長は、防火管理業務が法令の規定又は法第8条第1項の消防計画に従って行われていないと認める場合には、管理権原者に対し、防火管理業務が法令の規定又は消防計画に従って行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる(消防法第8条第4項)。
- 防火管理業務適正執行命令に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される(消防法第41条第1項第2号)。
- この罪を犯した者は、情状により懲役及び罰金が併科されることがあり(消防法第41条第2項)、また両罰規定が定められている(消防法第45条第3号)。
当社は、消防計画の作成や消防訓練の実施のみで十分と考えるお客様には、本サービスを提供しておりません。お客様に残るリスクを承知の上で、不十分なサービスで支援することは、当社のポリシーに反しています。
防火管理者業務を全面的に実施していない場合は、防火管理に必要とされる業務をワンパッケージ化した防火管理者外部委託サービスの導入をご検討ください。