マンションの火災事故で理事長に刑事責任が問われるのか

防火管理上の不手際が原因で火災事故が発生した場合、理事長の責任は問われることになるのか
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責任重大、マンションの理事長

マンション管理組合とは、分譲マンションの共有部分を管理・維持するために、そのマンションの区分所有者(住人)で組織される団体を指します。マンション管理組合の主な目的は、マンションの共用部分の適切な維持・管理を行うことによって、住居環境を良好に保ち、区分所有者の資産価値を守ることにあります。分譲マンションを購入した場合、その区分所有者は例外なくマンション管理組合の組合員になる必要があります。

マンション管理組合を円滑に運営するため、ほとんどのマンションに理事会が設置されています。理事会とは、管理組合の日常的な運営と管理を担当する執行機関で、マンションの区分所有者から選出された理事によって構成されており、その中から理事長が選ばれることになります。

マンションの理事長は、管理組合の運営を指揮し、理事会の代表として機能する重要な役職で、一般的には1~2年間の任期が設定されています。リーダーシップが求められるため、多くの理事長は本業でも重要な職に就いており、休日や空き時間を利用して理事会を率いています。また、住人への情報提供や説明会の実施など、コミュニケーション能力も理事長には不可欠です。時には住人間のトラブルの仲介をすることもありますが、そのほとんどはボランティア活動であり、報酬はありません。

このような事情から、輪番制で回ってくる理事会の「理事長の立候補を募る」という場面で、参加した理事たちが一斉に黙り込んでしまうという場面を見ることも少なくありません。この沈黙を破るのは、住人のためという強く尊い志に満ちた方ですが、万一、防火管理上の不手際が原因で火災事故が発生した場合、理事長の責任は問われることになるのでしょうか。

防火管理上の不手際が原因で火災事故が発生した場合、理事長の責任は問われることになるのか

火災でマンションの理事長が逮捕⁉

マンションの理事長が防火管理に関する義務を怠った結果として火災事故が発生した場合、管理権原者(防火管理の最高責任者)である理事長は法的責任を問われる可能性があります。民事上の責任として損害賠償を負う可能性がありますし、消防法違反による行政上の罰則や、最悪の場合、刑事責任を負うことも考えられます。

2001年に発生した「新宿・歌舞伎町ビル火災」で、44名もの尊い命が失われた痛ましい事故を覚えている方も多いでしょう。このビルの火災原因は放火ではないかと推測されています。避難経路である屋内階段に私物が大量に放置されていた上に、防火戸が機能しなかったため、出火元のテナントから高階へ大量の煙が流れ込み、逃げ遅れた全員が一酸化炭素中毒で亡くなったとされています。さらに、防火管理の基本である防火管理者の選任、消防計画の作成や届出の怠慢、消防訓練の未実施など、防火管理上の不手際が戦後最大級の火災事故を引き起こしました。この事故では、建物やテナントの責任者5名に対して執行猶予付きの有罪判決が下された点が注目されます。

防火管理にどれほど努めても、放火のリスクはすべての建物に潜んでいます。人命を奪う悲惨な火災事故が、自宅のマンションで起こらないと断言することはできません。そんな時、防火管理の最高責任者であるマンション理事長に刑事責任が問われるかどうかは、防火管理者をきちんと選任し、作成された消防計画に従って日々の防火管理を実施していたかが重要な鍵となります。

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防火管理者をプロに任せるという選択肢もあります

一定条件を満たす場合、防火管理の推進責任者である防火管理者を選任する必要が生じます。住戸のみで構成されるマンションにおいては、収容人員が50名以上いる場合に防火管理者の選任が必要となります。例えば、ファミリータイプのマンションであれば、20戸もあれば防火管理者の選任が必要となるでしょう。テナントが入居しているマンションでは、防火管理者を必要とする収容人員の条件が厳しくなります。そのため、ほとんどのマンションで防火管理者が必要であると言っても過言ではありません。

防火管理者に必要とされる責務は次の通りです。

  • 「防火管理に係る消防計画」の作成・届出を行うこと
  • 消火、通報及び避難の訓練を実施すること
  • 消防用設備等の点検・整備を行うこと
  • 火気の使用又は取扱いに関する監督を行うこと
  • 避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理を行うこと
  • 収容人員の管理を行うこと
  • その他防火管理上必要な業務を行うこと
  • 必要に応じて管理権原者に指示を求め、誠実に職務を遂行すること

《出典》東京消防庁 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jissen/p03.html

このように防火管理者の責務は多岐にわたるため、単に選任するだけでは不十分です。消防計画の作成・届出や消防訓練の実施はもちろんのこと、防火管理者は建物共用部の定期的な巡回点検を行い、必要に応じて管理権原者である理事長との連携が求められます。さらに、火災発生の際の防火管理の実施証拠として、巡回点検の結果や対応を記した報告書を作成し、それらのデータや記録を保存することが必要でしょう。

防火管理者は、管理権原者である理事長同様、防火管理の不手際が原因で火災事故が発生した場合、最悪のケースとして刑事責任が問われるリスクがあります。そのため、単に名義を借りるために住人から選任することは絶対に避けるべきです。

当社は、防火管理者として必要な全ての業務を引き受けることができます。プロとして防火管理者の役割を十分に果たせると自負していますが、当社に業務を委託しても、管理権原者である理事長の責任が免除されるわけではありません。放火のリスクがある以上、火災が絶対に発生しないと保証することはできませんが、火災事故が発生した場合には、適切な防火管理が施されていたことを警察や消防へ明確に説明し、理事長に刑事責任が問われることが万に一つもないように最善を尽くすことをお約束します。

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