防火管理者の外部委託が認められる条件とは
防火管理者の外部委託は、消防署長が認めた場合に限り行うことができます。実際には、消防署長が個別の事案ごとに可否判断を行うことはなく、担当部署や担当者に権限が委譲されており、消防署長の責任のもとで判断が行われていると考えられます。したがって、外部委託を検討する際には、事前に管轄消防署の担当部署に確認することが絶対条件となります。
防火管理者の外部委託の可否判断は、消防署ごと(場合によっては、担当者ごと)に異なる場合がありますが、首都圏をはじめ、全国的に東京消防庁の判断基準に準じていることが多いようです。
東京消防庁の判断に基づくと、防火管理者の外部委託の可否判断は、管理権原者(防火管理上の最高責任者=建物やテナントのオーナー等)から必要な権限が与えられ、かつ防火管理者としての資格と能力が備わっていることを前提に、以下の条件に該当する場合に認められます。
管理的または監督的な地位にある者が、次のいずれかの理由により防火管理上必要な業務を適切に遂行できないこと。
- 管轄消防署の管外に勤務している。
- 身体的な理由(高齢・病気等)がある。
- 日本語が不自由である。
- 従業員がいない、または極めて少ない。
東京消防庁のホームページにはこの条件のほかに「その他消防署長が認める事由がある」と明記されていますが、ある消防署で、本条件に該当する事例がなく、今後も該当するケースは想定できないとはっきり伝えられた経験があるため、一旦除外します。
《出典》東京消防庁 防火管理者の業務の委託についてhttps://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jissen/p06.html
防火管理者の外部委託が認められないケースがある
おかげさまで、現在1500件を超える物件の防火管理者を受託させていただいておりますが、そのうち東京都とその周辺の県(神奈川県、埼玉県、千葉県)の契約だけで1300件を超えています。北海道から沖縄まで、全国的に受託実績がありますが、実際のところ首都圏エリアが契約の大部分を占めています。
特に首都圏では、東京消防庁の判断基準に準じることが多いため、当社が外部委託の条件に合わないとして認められないケースはほとんどありません。一方で、以下のようなケースでは、たとえ首都圏であっても外部委託が認められず、「建物やテナントの内部から選任するように」と指示を受ける場合があります。なお、外部委託を認めない理由は必ずしも教えていただけるわけではないため、当社の経験に基づく推測も含まれます。
- 管理権原者が同じ建物あるいは近所に居住している(特に、管轄の消防署が管理権原者を把握している場合)。
- 火を扱う飲食店など、火災のリスクが高いと判断された場合。
- テナントの用途や規模、利用者の多さなどから、常勤者が管理すべきと判断された場合。
- 歴史的に重要な建築物が多いなどの地域特性から、建物等の常駐者が管理すべきと判断された場合。
- 同市内から選任することを、消防署の方針や判断基準の一つとしている場合。
5の「同市内からの選任」について補足しますと、本条件は特に地方で求められることが多いです。
当社は全国展開をしていますが、すべての市町村に防火管理者を配置しているわけではありません。一方で、たとえ地方であっても、防火管理者に選任されながら、実際には何もしないというような、単なる名義貸し同様のサービスは提供しません。具体例を挙げれば、月に1回、点検担当者が現地を訪れ、防火管理に特化した点検を行い、防火管理上の問題があれば即座に適切な対応を取り、その証跡として報告書を作成します。
そのため、地方であっても、近隣の市町村に対応できる拠点がある場合は、消防署の許可があれば受託が可能なケースがあります。しかし、市内選任という絶対条件が付されると、対応が難しくなる場合があります。
防火管理者の外部委託が認められない場合の対処法
まれなケースではありますが、上記のような理由で外部委託が認められない場合、お客様自身で防火管理者を選任し、当社が実務サポートを担当することが可能な場合もあります(防火管理全面サポート)。これは、建物オーナーやテナントに勤務する従業員等を防火管理者に選任していただき、実際の防火管理者として行うべき業務(消防署への届出書面作成や日常の防火管理、消防訓練)のサポートを当社に委託するものです。
防火管理全面サポートであっても、当社が防火管理者に選任された場合と同様、防火管理者に必要なすべての業務について責任をもって実施することを約束しますのでご安心ください。なお、消防署への届出書面はコンプライアンス上、行政書士が作成します。
繰り返しになりますが、当社はあくまで防火管理者をサポートする立場であるため、実際に選任された防火管理者には「当社がその責務を果たしているか」を管理していただくことになります。その判断材料として、月1回実施する巡回防火点検や自衛消防訓練の都度、報告書を作成し提出いたします。
これまで、防火管理全面サポートを含め、防火管理者の外部委託をご利用いただいたお客様が、当社が防火管理者の責務を果たしていないという理由で解約に至ったケースはありませんが、万一そのような事態が生じれば、即座に改善に向けた行動を取ることを約束します。それでも不十分と判断された場合は、業務委託契約を解約していただければと思います。年払い契約であっても、未実施期間については返金いたします。
なお、当社が防火管理者に選任されているか否かにかかわらず、最終的な防火管理の責任は管理権原者が負うことになります。そのため、管理権原者は常に当社が防火管理上の責任を十分に果たしているかを監督していただくようお願いします。