消防査察で指摘された「テナントの防火管理者がいない」
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、人との接触が容易になったことで、消防署の査察(立入検査)も全国で盛んに行われるようになりました。各消防署が管轄する防火対象物は非常に多いため、査察を実施する部署では、優先順位を設定して実施していると考えられます。
特に、火災発生時に甚大な被害が懸念される、不特定多数の人の出入りがある建物(例えば飲食店が入居するビル)では、建物の共用部や入居するテナントに防火管理者が選任されていない場合や、消防設備点検や防火対象物点検などの法定点検が未実施である建物に優先順位が高く設定されているようです。
様々な業種のテナントが入居する複合用途ビルでは、基本的に共用部と各テナントごとに防火管理者を選任する必要があります。条件によっては、これら複数の防火管理者のリーダーとして統括防火管理者を別途選任することが求められます。このように防火管理者を複数選任する必要がある建物では、選任される範囲ごとに管理権原(防火管理上の責任範囲)が分かれており、消防計画で定められています。この場合、テナント専有部の防火管理は、管理権原者である「テナントの責任者」の責務となります。
一方で、建物の管理権原者である建物オーナーにとっては、テナント専有部も建物の一部であることに変わりはなく、火災の危険にさらすわけにはいきません。テナントに防火管理者が選任されていない場合、消防計画の届出が行われていない可能性が高まります。これは、必要な防火管理が全く行われていない状態を意味し、防火管理に対する関心の欠如がタコ足配線や掃除の不備など、室内での火災発生リスクを高めることにつながります。特に、火を取り扱う飲食店で防火管理者が選任されていない場合は、非常に危険な状況だと言わざるを得ません。
また、「消防査察の違反は放置できない!ホームページでの公表リスク」というコラムで以前述べたように、自治体によっては、消防査察後に改善が認められない場合、その情報をホームページ等で公表する制度があります。例えば、東京消防庁管轄下の建物で、消防査察で2つ以上の違反が確認された後、3年以内の次回査察で前回と異なる違反を含む2つ以上の違反が再び確認された場合、2ヶ月の経過期間を経ても改善が見込まれなければ、東京消防庁のホームページ上で公表されるリスクがあります。
これは、防火管理上危険な建物としての注意喚起が目的であり、建物の資産価値に大きな影響を与える可能性があると考えられます。
《参考》東京消防庁の違反物件公表制度について https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/kk/ihan/index.html
テナントの防火管理者が不在の場合の対処法
テナントで防火管理者の選任が必要な場合、「防火管理者の選任と届出」を賃貸借契約の条件に含めることで、初期段階において問題解決することが最も確実です。一方、消防査察を通じて初めて防火管理者未選任のテナントが明らかになるケースも少なくありません。
消防査察時にテナントの責任者が在席している場合は、査察担当者から直接指導を受けられますが、責任者が不在であったり、テナントが営業していない場合、建物オーナーや統括防火管理者が対象テナントに防火管理者を選任するよう促す必要があります。
消防査察で不備が発覚した場合、管理権原者に対して改善計画報告書(自治体によって書式や名称が異なる)の提出が求められ、指摘された事項の改善に向けた具体的な行動計画を記載し、定められた期限内に消防署へ提出する義務が生じます。この改善計画報告書は、査察時に直接手渡される場合と、後日郵送される場合があります。直接手渡しできなかったテナントには、自分事として認識してもらうためにも、改善計画報告書を直接送付するよう、消防署の担当者に依頼することが推奨されます。
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