気がついたら119番通報
非常ベルと言うと、多くの人は緊急事態発生時に使用する「強く押す」と表記されたボタンを思い浮かべるでしょう。このボタンを押すと、非常事態を知らせる警報音(ベル音)が鳴りますが、この非常ベルには防犯や火災報知を目的としたものが存在します。その中でも、火災報知に使用するものは「非常ベル」ではなく「発信機」と呼ばれています。
ところで、この発信機が作動したとき、警報と同時に消防署に自動通知され、火災現場に消防車が駆けつけるものなのでしょうか?
小学生の時、いたずらで発信機を押そうとしたことがありますが、その際、先生から「消防車が来るぞ!」と叱られました。その先生の言葉は、嘘であると同時に真実でもあります。
発信機が作動した際に119番に自動で通報する「火災通報装置」(消防機関への通報を行う火災報知設備)が設置されている建物は、実はそれほど多くありません。火災通報装置の設置義務がある建物は、病院、福祉施設など、避難が困難な利用者がいる等の一部に限定されています。
ではなぜ、火災通報装置が設置されていない建物が多いにもかかわらず、「発信機」が作動したら高い確率で消防車が駆けつけるのでしょうか。
それには次のような理由が考えられます。
- 建物内の誰かが「ベルが鳴っている」と気づき、119番通報している。
- 通行人の誰かが「ベルが鳴っている」と気づき、119番通報している。
- 警備会社と契約している物件で、警備会社が火災信号の受信にも対応している。
なお、警備会社が119番に通報する際の流れは以下の通りです。
- 発信機が押されるか、感知器が火災を検知する。
- 自動火災報知設備の受信機が火災信号を受け取る。
- 警備会社の機器が火災信号を検知する。
- 警備会社が建物に確認の電話をかけ、状況に応じて119番に通報する。
このように、火災通報装置が設置されていない建物においては、誰かが119番に通報すれば消防車は駆けつけますが、誰も通報しなければ消防車は来ません。そのため、皆さんが火災を知らせる警報に気づいたら、119番に通報するようにしてください。
明らかな火災が確認できなくても、119番への通報が必要です。その場合は、火災かどうか不明な点を伝えれば、1~2台の消防車が現地へ確認に向かい、実際の状況を調査してくれます。
さらに、初期消火が可能な場合、自身の安全を確保した上で協力をお願いします。
多くの建物に取り付けられている標準的な消火器は、1台あたり15秒程度しか消火剤を放出できないため、火を消すためには複数の消火器の使用が必要です。火災の発生を周囲の人々に知らせ、状況に応じて消火の協力を要請することで、初期消火の成功率を高めることができます。
なお、「消火器の使い方は『ピノキオ』で覚える」という方法があります。このフレーズを思い出すことで、慌てずに対応できます。
『ピ』ピンを抜く
『ノ』ノズルを火元に向ける
『キ』距離を取る
『オ』押す
「火元までの適切な距離」は消火器によって異なりますが、概ね3メートルから6メートル程度と言えます。炎から遠すぎると消火剤が届かず、逆に炎に近づきすぎると衣類や体に火が移る危険があります。消火器の放射距離や放射時間は、消火器自体に記載されていますので、事前に確認しておくことをお勧めします。
また、消火器を使用する際は、後方に玄関などの逃げ道を確保してから使用するようにしてください。初期消火ができなかった場合は、火元とは反対方向に逃げる必要があります。さらに、炎が天井まで届いている場合は、天井裏で炎が這い、逃げ道を塞いでいる可能性があるため、直ちにその場から逃げることが重要です。
詳しくは、コラム「防火管理者の役割としてチェックしたい『消火器の不備』」をご覧ください。
当社の防火管理者外部委託サービスや消防訓練サポートサービスをご利用のお客様には、有料オプションとして「発信機(強く押す)」のボタンを自由に押せる体験を提供しています。
発信機を正確に作動させるには火災受信機の設定など、専門的な知識が求められますが、当社の有料オプション「非常ベルくん」は実際のボタンとベルを使用し、「強く押す」という指示に従い、どれくらいの力で押すべきか、どのくらいの音量でベルが鳴るのか、ベルを止めるにはどうすればいいのかを体験することができます。
消防訓練の参加者が少なくてお困りのお客様には、当社のサービスが手助けとなる可能性がありますので、ぜひご検討ください。